もし、あなたの妻が海外赴任になったら? その3

dominican_republic

前回からの続きとなるが、重い話ばかりしてとても暗い流れになってきたので話題を変えたい。
妻の海外赴任についていく一番わかり易いメリットは、海外旅行ができる事である。
ロンドン在住中に旅行で訪れた場所(除日帰り旅行及び日本一時帰国、除出張)は以下となる。

2016年

mijas

  • フィレンツェ
  • リスボン&サン・セバスティアン
  • アムステルダム
  • マルタ
  • パリ
  • コッツウォルズ
  • バルセロナ&グラナダ&ミハス
  • エジンバラ
  • ノルウェーフィヨルドクルーズ
  • ボルドー
  • フレンチアルプス

2017年〜2018年3月迄

versaille

  • ドバイ&アブダビ
  • ウェールズ
  • デュッセルドルフ・ケルン
  • 地中海クルーズ(イタリア・クロアチア・モンテネグロ・ギリシャ)
  • トスカーナ&シエナ
  • ローマ
  • フレンチアルプス
  • リバプール&マンチェスター
  • パリ
  • サセックス&ブライトン
  • ドミニカ共和国
  • プラハ

JTB総合研究所の調べによると、日本人の平均海外旅行回数は1.6回/年とのこと。
我が家の海外旅行は期間2年4ヶ月(28ヶ月) 旅行回数 23回、平均的日本人の13.8年分の旅行に相当。年平均9.4回。
イギリス国内の日帰り旅行も含めれば勿論もっと増える。

世界には素敵な場所が一杯あり、その様な場所に訪れて見聞を広めることができただけでも海外主夫で飛び出してよかったと思っている。

出世街道を邁進したり、起業で頑張るのも勿論素晴らしいが、その様な高馬力高速度のF1的世界観から、一歩道を外れて、子育てしながらパリのビストロで飯を食べたり、昼からロンドンのパブでビールを飲んでいると、ああ、ママチャリを漕いだり、路線バスでのんびり進むようなユルイ人生もあるのだなあと新たな世界に開眼してしまった。

さらに海外赴任の帯同なら、基本的に自分は働かなくても経済的には困らないはずなので、逆に自分が現地で就職し、お金を稼げば、全て家計のアドオン。全部旅行などの遊興費に使えてしまうので、ますます行く場所が増えてしまう。仕事の探し方についてはまた別途論じたい。

人生観は人それぞれ、ただ逆張りの人生も捨てたもんじゃないという今回のお話でした。

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もし、あなたの妻が海外赴任になったら? その2

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前回からの続きになるが、
なぜ新たな視点を手に入れる必要があるのか?そして海外主夫がそのきっかけとなるのか?に答えたい。

  • 今後の人生は直線的でない。
  • 自分が弱者になるときが来る。

この2点に尽きると思う。

まず、日本の社会はこの20年で崩壊すると多くの論者が主張しているし、私もそれを信じている。人口減は5年10年のトレンドで回復することはない、一方出ていくお金は増える一方である。夕張市のような日本国自体が赤字自治体となり、年金、健康保険等の社会保障は縮小に向かい、多くの弱者を切り捨てるような社会に向かわなければならないことが容易に想定できる。

デービッド・アトキンソンの著書「新生産性立国論」では、日本の生産年齢人口は2060年まで32635000人も減少し、一方高齢者は3464万人となり、現状の社会保障制度を維持するためには働く人達1.3人で1人の老人を支える社会(現在は2.3人で1人)となる。そのために生産年齢人口を全て移民で増やそうとすると、5人に2人が移民となる国になると語っている。これはBrexitで大騒ぎの英国どころではない。これは我々世代は老後、自害して人口を減らさなければ国が滅ぶ勢いである。

自分がいた英国は、日本と同じく国民皆保険制度があるが、財政難の為医療サービスがどんどん切り詰められた結果、風邪を引いてもアポは2,3週間後、しかも風邪程度では薬を処方してもらえない社会である。すぐ医者に診てもらいたければ、高額なお金を出してプライベートの医療保険に入り、医者へのファストパスを手に入れなくてはならないのである。別にそうしたいわけではない、国家の首が回らないからそういう結果になる。そういった意味では、欧州のほうが課題解決先進国であり、日本は課題先延ばし先進国としか見えないのである。

この先20年後、自分は年を取り、社会的弱者へと成り果てる。それまでに自分を自分の力で身を守るだけの人間になれるのだろうか。今勤めている会社を定年になっても、引っ張りだこの人材になれるのか、そして家庭に入ったとしても、仕事で忙しいであろう子供達に迷惑をかけず、自分で生活できるだけの家事スキルを持った人間でいられるのか。

大きな視点に立てば、この国が沈みつつあることが分かっているのに、国の社会保障に老後の身の全てを預けることがこれからの子供達の世代にとって幸せなことなのか。子供たちに明るい未来を!といいながら、いざとなれば、自分の世代さえ良ければいい、増税反対、弱者切り捨て反対、何でも反対の懐古主義、現状維持へ向かった政治活動、投票行動を行うことにならないだろうか。

我々が子供世代を思いやり、生き生きと人生を全うできるようなロールモデルを実現しなくては、この国は潰れる。

そのためには、自分自身の能力で勝負できるようなスキルや経験を身につけ、またそれを身につけるような学びの時間が必要だ。

例えば、日々の家事を逃げ場無く向き合い、一通りのことが出来るようになっただろうか?海外でピンからカネを稼ぐことができるほどのビジネス力があるだろうか?

それを手っ取り早く身につけられるのが、海外主夫生活だと思っている。

私は以下に挙げる3点において、個々人のパラダイムシフトが必要だと常に感じている。

  • 自分のキャリアの可能性に対し、限りなくオープンであること。(今の会社を辞めても何が問題なのか)
  • 常に新しい事を学び続けること(家事も一つ。学校にいくことだけが全てではない)
  • ワークライフバランスを計算した上で、その実現の為、多少のリスクを取りに行くこと。

このパラダイムにおいて欧州の人たちは我々よりも何周もサーキットを先に進んでいると思う。

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もし、あなたの妻が海外赴任になったら? その1

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管理職になり、海外拠点長の任を受ける―このような女性の真の社会進出が今後盛んになるか、この保守的な日本では疑わしいが、女性の海外赴任のチャンスが増えていくことはあるものの、後退することはまずなかろうと思われる。

では妻がそんな辞令を職場から受けた時、夫である男性はどうするのか?大きな問題である。特に子供がいる場合、簡単に一緒に行く、行かないの判断が付きづらい。

それでも経験者としての結論は、「一緒に行くべき」である。

勿論、その場合、配偶者としての自分は仕事を辞めたり、長期で休暇をとる事になり、キャリアに大きなキズが付く。
妻が赴任先でバリバリ仕事をしている一方で、自分は主夫業を営まなくてはならない。社会で活躍をしていればしているほど、男子のプライドにもキズが付くと感じるだろう。

いやいや、男性の海外赴任に付き従った奥様も同じキズを感じているのだ。
女性は仕事をやめて旦那についていくのがアタリマエではないのだ。

専業主夫になることで、もう一方のジェンダーから見る世界を見ることが出来る。
日本の社会システムは欧米からみたら圧倒的にまだ男性中心、つまりこれは弱者の視点から世の中を見ることが出来るのである。

得られる視点はこれだけではない、海外と日本を相対化して眺められる視点である。
日本という国が、綺麗で、礼儀ただしく、ご飯も美味しい素晴らしい国であることを実感する一方、未来が暗澹としていることがよく分かる。

海外に比べて全然見かけない子供達。欧米と比べて圧倒的に少ない外国人。障害者がテレビに殆ど露出しないといったダイバーシティに欠けた価値観。優先席を率先して空けない不親切さ。混雑した電車にベビーカーを乗せるべきではないといった議論で燃え上がる社会の不寛容さ。ディズニーランドの値上げが異常と感じるほどデフレに慣れきった社会。。。。

世界の片隅で、ちっぽけな存在になることで得られる視点。
アルフレッド・ウェゲナーもビックリの脳内地殻変動だ。
しかしこの体験こそが、100年と言われる人生へ向けたパラダイムシフトを起こすきっかけとなりうるのだ。

これがタダで手に入るのなら、安いものだ。

つづく

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ロンドン生活終了

thames_river妻の帰任に伴い、日本に帰ります。2015年の冬に来て2年と約半年、ついにこの日がやって来ました。

思えば40代無職になっての渡英、専業主夫としての苦闘と苦悩、二足の草鞋を目指して意地のフリーランス開始、そして現地社員へのステップアップと目まぐるしく変化し、その間人一倍旅もしました。すでにこの生活は日常化し普通に時が過ぎて行く一方、ついこの間ロンドンに来たばかりのようにも思え、帰るという実感も湧きません。正直やり残したこともたくさんあります。

ただ、少なくともこの2年半の生活の中で、日本のしがらみを一切断ち、背負う会社も名刺もない、ただの一人の人間として世界一のダイバーシティを誇るロンドンにいた事は私の人生において非常に大きな意味を今後も持ち続けるでしょう。

特に、国籍を問わず人々の様々な価値観や生き様を現地人に近い立場で色眼鏡なく吸収出来たこと、子育てに優しい社会の中で、何より子供や家族と一緒に過ごす時間を大切にした欧州式のライフスタイルを経験できたことは大きいです。

仕事という言い訳無しの立場になった専業主夫時代は、主夫活動を通し、家事育児への理解やコミットメントが少なかった自分を反省するばかりでした。所謂「名も無き家事」と言われるような日々の細かな家庭の仕事について妻に頼りきりで、なんにも考えていなかった自分の視野の狭さが身に沁みるほど理解出来ました。

仕事を始める段階になったところでは、仕事と家庭の両立以前に、海外で仕事を手に入れることの難しさにぶち当たり、自分の存在は社会にとって意味があるのか?とさえ自問自答する日々でした。その中で転換点になったのは、現地日本人コミュニティに食い込み、イギリスで裸一貫から成功を手にしたベンチャースピリット溢れる方々と知り合うことが出来、助けていただいたことです。

そして1年働いた職場については、自分が子育てを中心に生活を回していることを理解頂き、毎日5時に会社を出る前提でも雇ってもらえたことに感謝です。そして3ヶ月に1度のペースで1週間以上の休暇を取り、ヨーロッパ、中米など様々な場所へ家族旅行に行くことが出来ました。

子供も大きくなりました。1歳8ヶ月で来たばかりの時は、私が四六時中面倒を見なくてはならない、小さく幼い存在でしたが、もう来月で4歳。立派にナーサリーで友達や先生と英語でコミュニケーションを取り、トイレなど自分で身の回りのことをしたり、遊びを考えたり、個性を発揮しています。子供にとっては、大変だったかもしれませんが、明らかに教育上良かったと断言できます。

日本に帰って新たな生活がはじまっても、我が一家の旅は続きます。これから自分はどこへ向かうのか、家族とどういう幸せを手にしたいのか、良い機会だと思うのでいろいろ考えていきたいと思います。

ブログについては、まだ英国生活で書き残したこともあるので、時々更新しようかと思います。

子連れウェールズの旅 その2

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スノードニア国立公園を旅する

森と山と湖がある。それが新鮮!

前回紹介した、海沿いの城址から南下すると、スノードニア国立公園がある。ココはイングランドとは違った、変化に飛んだ美しい自然がある。

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ぱっと見、山と湖なのだが、実際山と湖である。たかがこんな景色、日本人にとっては大した話ではない。されど山のないロンドン近郊、ちょっと2,3時間ドライブしても、このような景色を拝むことが出来ないのだ。久々に見る雄大な自然に心がなごむ。

登山鉄道でスノードン山山頂へ

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ウェールズの旅のハイライトの一つ、登山鉄道で、ふもとのスランベリス(Llanberis)からスノードン山(1,085m)の山頂を目指す。ここはイギリスとアイルランドを含めても4番目に高い山。標高1,000メートルでもイギリス人にとってはすごいことなのだ。

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ところで、美しい海岸、山と湖があるウェールズの北部地方には、観光鉄道が沢山ある。多くは蒸気機関車が牽引し、のんびりとした旅情を愉しむことが出来る。その中でも、スノードンの山頂に向かうスノードン登山鉄道は、最も人気のある鉄道の一つ。乗る場合は要予約である。

steam_engine

予約にまつわる話として、我々の乗車時には、一つハプニングが発生した。車両に乗り込んだら何故か我々の指定席に他の乗客が座っていた。異変に気づいた車掌が両者のチケットを確認すると、今座っていた年配のグループのチケットがなんと、来月の予約だったのだ。乗客の落胆と羞恥の表情は勿論、車内の乗客全員から漏れる「Oh!」の声。まさかこれだけの為に来月また来ることも無いだろう、本当に気の毒だ。

いざ出発。蒸気機関車から出る白煙と水蒸気がまるで霧のよう。

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灌木すら無く日本だったら高原の様な景色だが、標高300メートル程度。

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単線なので、待ち合わせ。前方からはディーゼル機関車がやって来た。

rail

霧が出ててきたのが残念だが、目下に広がる雄大な景色。まるで3,000メートル級の高原に来たようだ。でも標高700メートル位。

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線路と平行に走る登山道に目を向けると、犬を連れて歩いている登山客がいる。この景色に犬の散歩。。奇妙な風景だ。小さい子供も普通に歩いているので、ほぼハイキング気分で気楽に登山が出来るようだ。

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山頂に到着。残念ながら山頂は更に濃い霧に覆われ、自分の周り以外何も見えなかった。

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崖の向こうは真っ白。晴天時の眺めはページ最初の写真にあるような景色にみえるのだろう。

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可愛らしい宿で出会った海塩

二日目の宿は、国立公園内の小さな町の北欧趣味なB&Bに泊まったのだが、そこでとても素晴らしい物に巡り合った。テーブルの上に置かれていた調味料の一つに塩のポットがあり、それがとても美味しかったのだ。

OLIF

その名前はハレン・モン (HALEN MON)。ウェールズのアングルシー島で生産されているこの海塩は、海のミネラル分がたっぷり含まれていてものすごくコクがある。だからシンプルな温野菜や茹でたジャガイモなどにふりかけるだけでとても美味しい。こんな旨味の強い塩は日本で食べたことがない。とても感動してあとで買い込んでしまった。

HALEN_MON