ロンドン生活終了

thames_river妻の帰任に伴い、日本に帰ります。2015年の冬に来て2年と約半年、ついにこの日がやって来ました。

思えば40代無職になっての渡英、専業主夫としての苦闘と苦悩、二足の草鞋を目指して意地のフリーランス開始、そして現地社員へのステップアップと目まぐるしく変化し、その間人一倍旅もしました。すでにこの生活は日常化し普通に時が過ぎて行く一方、ついこの間ロンドンに来たばかりのようにも思え、帰るという実感も湧きません。正直やり残したこともたくさんあります。

ただ、少なくともこの2年半の生活の中で、日本のしがらみを一切断ち、背負う会社も名刺もない、ただの一人の人間として世界一のダイバーシティを誇るロンドンにいた事は私の人生において非常に大きな意味を今後も持ち続けるでしょう。

特に、国籍を問わず人々の様々な価値観や生き様を現地人に近い立場で色眼鏡なく吸収出来たこと、子育てに優しい社会の中で、何より子供や家族と一緒に過ごす時間を大切にした欧州式のライフスタイルを経験できたことは大きいです。

仕事という言い訳無しの立場になった専業主夫時代は、主夫活動を通し、家事育児への理解やコミットメントが少なかった自分を反省するばかりでした。所謂「名も無き家事」と言われるような日々の細かな家庭の仕事について妻に頼りきりで、なんにも考えていなかった自分の視野の狭さが身に沁みるほど理解出来ました。

仕事を始める段階になったところでは、仕事と家庭の両立以前に、海外で仕事を手に入れることの難しさにぶち当たり、自分の存在は社会にとって意味があるのか?とさえ自問自答する日々でした。その中で転換点になったのは、現地日本人コミュニティに食い込み、イギリスで裸一貫から成功を手にしたベンチャースピリット溢れる方々と知り合うことが出来、助けていただいたことです。

そして1年働いた職場については、自分が子育てを中心に生活を回していることを理解頂き、毎日5時に会社を出る前提でも雇ってもらえたことに感謝です。そして3ヶ月に1度のペースで1週間以上の休暇を取り、ヨーロッパ、中米など様々な場所へ家族旅行に行くことが出来ました。

子供も大きくなりました。1歳8ヶ月で来たばかりの時は、私が四六時中面倒を見なくてはならない、小さく幼い存在でしたが、もう来月で4歳。立派にナーサリーで友達や先生と英語でコミュニケーションを取り、トイレなど自分で身の回りのことをしたり、遊びを考えたり、個性を発揮しています。子供にとっては、大変だったかもしれませんが、明らかに教育上良かったと断言できます。

日本に帰って新たな生活がはじまっても、我が一家の旅は続きます。これから自分はどこへ向かうのか、家族とどういう幸せを手にしたいのか、良い機会だと思うのでいろいろ考えていきたいと思います。

ブログについては、まだ英国生活で書き残したこともあるので、時々更新しようかと思います。

子連れウェールズの旅 その2

snowdonia

スノードニア国立公園を旅する

森と山と湖がある。それが新鮮!

前回紹介した、海沿いの城址から南下すると、スノードニア国立公園がある。ココはイングランドとは違った、変化に飛んだ美しい自然がある。

lake

ぱっと見、山と湖なのだが、実際山と湖である。たかがこんな景色、日本人にとっては大した話ではない。されど山のないロンドン近郊、ちょっと2,3時間ドライブしても、このような景色を拝むことが出来ないのだ。久々に見る雄大な自然に心がなごむ。

登山鉄道でスノードン山山頂へ

station

ウェールズの旅のハイライトの一つ、登山鉄道で、ふもとのスランベリス(Llanberis)からスノードン山(1,085m)の山頂を目指す。ここはイギリスとアイルランドを含めても4番目に高い山。標高1,000メートルでもイギリス人にとってはすごいことなのだ。

mountain_railway

ところで、美しい海岸、山と湖があるウェールズの北部地方には、観光鉄道が沢山ある。多くは蒸気機関車が牽引し、のんびりとした旅情を愉しむことが出来る。その中でも、スノードンの山頂に向かうスノードン登山鉄道は、最も人気のある鉄道の一つ。乗る場合は要予約である。

steam_engine

予約にまつわる話として、我々の乗車時には、一つハプニングが発生した。車両に乗り込んだら何故か我々の指定席に他の乗客が座っていた。異変に気づいた車掌が両者のチケットを確認すると、今座っていた年配のグループのチケットがなんと、来月の予約だったのだ。乗客の落胆と羞恥の表情は勿論、車内の乗客全員から漏れる「Oh!」の声。まさかこれだけの為に来月また来ることも無いだろう、本当に気の毒だ。

いざ出発。蒸気機関車から出る白煙と水蒸気がまるで霧のよう。

train

 

灌木すら無く日本だったら高原の様な景色だが、標高300メートル程度。

view

単線なので、待ち合わせ。前方からはディーゼル機関車がやって来た。

rail

霧が出ててきたのが残念だが、目下に広がる雄大な景色。まるで3,000メートル級の高原に来たようだ。でも標高700メートル位。

view2

線路と平行に走る登山道に目を向けると、犬を連れて歩いている登山客がいる。この景色に犬の散歩。。奇妙な風景だ。小さい子供も普通に歩いているので、ほぼハイキング気分で気楽に登山が出来るようだ。

view3

 

山頂に到着。残念ながら山頂は更に濃い霧に覆われ、自分の周り以外何も見えなかった。

peak_station

崖の向こうは真っ白。晴天時の眺めはページ最初の写真にあるような景色にみえるのだろう。

peak

可愛らしい宿で出会った海塩

二日目の宿は、国立公園内の小さな町の北欧趣味なB&Bに泊まったのだが、そこでとても素晴らしい物に巡り合った。テーブルの上に置かれていた調味料の一つに塩のポットがあり、それがとても美味しかったのだ。

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その名前はハレン・モン (HALEN MON)。ウェールズのアングルシー島で生産されているこの海塩は、海のミネラル分がたっぷり含まれていてものすごくコクがある。だからシンプルな温野菜や茹でたジャガイモなどにふりかけるだけでとても美味しい。こんな旨味の強い塩は日本で食べたことがない。とても感動してあとで買い込んでしまった。

HALEN_MON

 

 

 

 

子連れウェールズの旅 その1

ウェールズといってどのような印象を持つだろうか。イギリス皇太子の称号であるプリンス・オブ・ウェールズ、イギリスの一地方、スコットランドは有名だけどあまり聞かないマイナーな場所。

そんなところではないだろうか。

しかしながら、今年6月に訪れて、かなり素晴らしい場所だったのでご紹介したい。是非機会があれば子連れ家族旅行の目的地の一つに加えていただきたいと思う。

イングランドって風景が退屈

特にロンドンから車に乗っていろいろ旅をしてみるとほどなく判るのだが、イングランドはとにかく見渡す限り平坦な丘。羊が放し飼いに鳴っているか、じゃがいも畑や雑木林あるばかりで、遠くに山が見えたり、鬱蒼とした大森林があったり、大河が横たわっていたりするわけではない。まさに日本でもお馴染みの、イギリスの有名子供番組、テレタビーズの背景と同じ。

teletubbies

日本から引っ越して最初のうちは、それはそれで日本と違うのどかな景色に異国情緒を感じる。しかし、程なく別の国、例えばフランスやイタリアやスペインに旅して、それらのダイナミックな景色を脳裏に焼き付けてからイングランドに戻ると、あまりの金太郎飴的な景色に退屈を感じてしまうのだ。

florenceフィレンツェ。都市と山がダイナミックな景観を作っている。

motorway_englandイングランドの典型的な風景。(wikipedia)

そうだ、ウェールズに行こう

ウェールズは明らかにイングランドとは違う景色、そして文化がある。特に北ウェールズはイングランドの影響が少なく、よりウェールズらしさが残っていると言われる。確かに距離はある。朝8時にロンドンを出ても、車でノンストップ行って4時間半、途中の休憩などを考えれば5,6時間を見ておかなくてはならない。

北ウェールズの古城たち

中世の雰囲気たっぷり、コンウィ城(Conwy Castle)

conwy_castle

13世紀にイングランド王エドワード1世が築いたウェールズ征服の拠点。重厚な石造りの砦は軍事拠点として機能していたことを偲ばせる。いにしえの兵士たちの息遣いがきこえてきそうである。

城の塔から見下ろす港の景色も雄大。

今も英国王室の儀式で使われるカーナヴォン城(Caenerfon Castle)

Caenarfon1

こちらもエドワード1世によって築城されたもの。但し、ウェールズを平定してから建設されたため、攻略拠点としてのコンウィ城よりも王城としての優雅さを漂わせている。また、上記の歴史に因み、現在でもこの城でプリンス・オブ・ウェールズ、つまり英国皇太子の叙位式典が執り行われる。

caenerfon2

この日は城内で中世の武術のデモンストレーションが行われていた。

そして旅はウェールズの大自然へ

これらお城だけでも世界遺産であり、見る価値十分なのだが、次回は少し南の内陸部に下りたスノードニア国立公園を紹介したい。

snowdoniaほらほら、すごいでしょ?

その2へ続く

ピクルドエッグを食す

イギリスの食文化の貧しさ、もとい素朴さが際立つ一品。

酢に漬けたゆで卵。原料は卵と酢、それ以下でも以上でもない。

漬けてあるのが米酢のような醸造酢ではなく、蒸留酢であるホワイトビネガーの為、酸味が鋭い。勿論酢からの旨味は全く感じられない。キュウリなど他のピクルスが砂糖や胡麻で味や風味を漬けてあるのとは対象的である。

これは食べ物として完成品なのかという疑問はさておき、こんな工夫のないものを瓶詰めにして売るという感覚も驚嘆に値する。

断っておくが、私自身は割りと嫌いではない、食べ始めると癖になり、むしろ素朴で美味しいと感じてしまう。

これを初めて知ったのは、友人に誘われて先月訪れた、ビールフェア ”CAMRA Great British Beer Festival”での事。

ビールフェア自体に言及しておくと、これは楽しかった。英国全土のクラフトエール/ビールが集まるイベントで、大きな展示会場は酔っぱらいのおじさんだらけ。ビールのブース以外にも、食べ物の屋台やテキ屋の様なゲームまである。大の大人皆童心に帰っているが、もちろん18禁。

そこにピクルドエッグの屋台もあって、友人に進められて挑戦することに。
このビジュアルでしかもイギリスの食べもの。。。。なんか濁った液体に入ってるし、色もヤバイ。大体イギリスで見た目よりもまずいものはいくらでも知ってるが、見た目よりうまいものなんて見たこと無い。久々に本能が危険信号を鳴らしている。そんな未知との遭遇であった。

みんな大好きなのだろうか、結構イギリス人がブースにたかっている。小さな紙袋の中に酢卵とポテトチップを入れ、中でポテトチップを粉々にして、袋の中でシャカシャカして食べている。
確かにコクばかりでキレの少ないまったりしたイギリスのエールには、キュッと酸っぱい卵は相性がいい。でもなあ。ドイツ人がソーセージで、スペイン人がタパスでビールを飲むのとはえらい違いなんだよなあ。

最近イギリスの食べ物には驚かなくなったのだが、久々にやはりすごい文化だと思った出来事だった。

イギリス恐るべし。

だから僕は肉を焼く

fire夜中の23時。俺は肉を焼いている。
オーブンの灯りが静まり返ったキッチンに寂しげに仄めく。

肉が食べたいからではない。
明日娘に食べさせる肉を焼いているのだ。

今週日曜日から1週間、妻が日本出張に行っている。残された自分と娘。
今日は2日目の晩が終了。ここまでは全て自分で対応した。

明日は小休止。ナニー(ベビーシッター)にお願いして、ナーサリーの迎え、食事、風呂、寝かせまでお願いする予定。
自分はすこし遅くまで仕事をして、普段見ぬロンドンの夜の街をぶらついて帰ろうかと思っている。

ところで、ナニーに子供の食事をしてもらえるといってもご飯の用意はコチラでしておかなくてはならない。shiokoji_chickenとりあえず明日の子供の夕食は、妻が作り置いてくれたものと、今焼いている鶏肉の塩麹漬け。作り置きはインゲンの胡麻和え、高野豆腐。味噌汁はフリーズドライのインスタントに。

勿論作り置きをしてくれた妻には感謝なのだが、自分と子供の2人だと、楽な面も実はある。
一番は炊事の手が抜けること。家事・育児における炊事の負担はハンパないのだ。

だから、子供の分さえきちんと食べさせれば、自分は正直どうでもいい。晩御飯はビールにピーナツとか、ワインにチーズとか、ちょっと小腹が空けば辛ラーメンにもやしをいれればそれで十分。

子供の食事でさえ、買えば済むソリューションも日本ほどではないが、それなりにある。例えば冷凍餃子、日本製だけでなく、韓国製や中国・香港製も合わせると結構なバリエーションがあるし、とくに中華圏の水餃子は美味しい。子供も大好きである。

そしてピザ。こちらのピザは4−5ポンドで具だくさんな冷蔵ピザが売られている。これをオーブンで焼けば日本の配達ビザとほぼ変わらぬクオリティのピザが食べられるので、自分は赤ワインでも開けて、これを娘とシェアすれば十分。

あとは乾麺のうどんやひやむぎ。細かく刻んだニンジンや白菜をうどんスープで煮込み、うどんを合わせるだけ。野菜があまり気にならない形で食べてくれるのが良し。

20分経過。ひとまず完成。ネギっぽく見えるのはリーク。ネギより大きいので、写真では鶏肉が小さく見えてしまう。これで明日は安心だ。とりあえず焼き鳥臭くなった身体をシャワーするか。今日は娘はぐっすり寝ているようだ。

 

ひとりぼっちの夜。ちょっと幸せ。