子連れウェールズの旅 その2

snowdonia

スノードニア国立公園を旅する

森と山と湖がある。それが新鮮!

前回紹介した、海沿いの城址から南下すると、スノードニア国立公園がある。ココはイングランドとは違った、変化に飛んだ美しい自然がある。

lake

ぱっと見、山と湖なのだが、実際山と湖である。たかがこんな景色、日本人にとっては大した話ではない。されど山のないロンドン近郊、ちょっと2,3時間ドライブしても、このような景色を拝むことが出来ないのだ。久々に見る雄大な自然に心がなごむ。

登山鉄道でスノードン山山頂へ

station

ウェールズの旅のハイライトの一つ、登山鉄道で、ふもとのスランベリス(Llanberis)からスノードン山(1,085m)の山頂を目指す。ここはイギリスとアイルランドを含めても4番目に高い山。標高1,000メートルでもイギリス人にとってはすごいことなのだ。

mountain_railway

ところで、美しい海岸、山と湖があるウェールズの北部地方には、観光鉄道が沢山ある。多くは蒸気機関車が牽引し、のんびりとした旅情を愉しむことが出来る。その中でも、スノードンの山頂に向かうスノードン登山鉄道は、最も人気のある鉄道の一つ。乗る場合は要予約である。

steam_engine

予約にまつわる話として、我々の乗車時には、一つハプニングが発生した。車両に乗り込んだら何故か我々の指定席に他の乗客が座っていた。異変に気づいた車掌が両者のチケットを確認すると、今座っていた年配のグループのチケットがなんと、来月の予約だったのだ。乗客の落胆と羞恥の表情は勿論、車内の乗客全員から漏れる「Oh!」の声。まさかこれだけの為に来月また来ることも無いだろう、本当に気の毒だ。

いざ出発。蒸気機関車から出る白煙と水蒸気がまるで霧のよう。

train

 

灌木すら無く日本だったら高原の様な景色だが、標高300メートル程度。

view

単線なので、待ち合わせ。前方からはディーゼル機関車がやって来た。

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霧が出ててきたのが残念だが、目下に広がる雄大な景色。まるで3,000メートル級の高原に来たようだ。でも標高700メートル位。

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線路と平行に走る登山道に目を向けると、犬を連れて歩いている登山客がいる。この景色に犬の散歩。。奇妙な風景だ。小さい子供も普通に歩いているので、ほぼハイキング気分で気楽に登山が出来るようだ。

view3

 

山頂に到着。残念ながら山頂は更に濃い霧に覆われ、自分の周り以外何も見えなかった。

peak_station

崖の向こうは真っ白。晴天時の眺めはページ最初の写真にあるような景色にみえるのだろう。

peak

可愛らしい宿で出会った海塩

二日目の宿は、国立公園内の小さな町の北欧趣味なB&Bに泊まったのだが、そこでとても素晴らしい物に巡り合った。テーブルの上に置かれていた調味料の一つに塩のポットがあり、それがとても美味しかったのだ。

OLIF

その名前はハレン・モン (HALEN MON)。ウェールズのアングルシー島で生産されているこの海塩は、海のミネラル分がたっぷり含まれていてものすごくコクがある。だからシンプルな温野菜や茹でたジャガイモなどにふりかけるだけでとても美味しい。こんな旨味の強い塩は日本で食べたことがない。とても感動してあとで買い込んでしまった。

HALEN_MON

 

 

 

 

ピクルドエッグを食す

イギリスの食文化の貧しさ、もとい素朴さが際立つ一品。

酢に漬けたゆで卵。原料は卵と酢、それ以下でも以上でもない。

漬けてあるのが米酢のような醸造酢ではなく、蒸留酢であるホワイトビネガーの為、酸味が鋭い。勿論酢からの旨味は全く感じられない。キュウリなど他のピクルスが砂糖や胡麻で味や風味を漬けてあるのとは対象的である。

これは食べ物として完成品なのかという疑問はさておき、こんな工夫のないものを瓶詰めにして売るという感覚も驚嘆に値する。

断っておくが、私自身は割りと嫌いではない、食べ始めると癖になり、むしろ素朴で美味しいと感じてしまう。

これを初めて知ったのは、友人に誘われて先月訪れた、ビールフェア ”CAMRA Great British Beer Festival”での事。

ビールフェア自体に言及しておくと、これは楽しかった。英国全土のクラフトエール/ビールが集まるイベントで、大きな展示会場は酔っぱらいのおじさんだらけ。ビールのブース以外にも、食べ物の屋台やテキ屋の様なゲームまである。大の大人皆童心に帰っているが、もちろん18禁。

そこにピクルドエッグの屋台もあって、友人に進められて挑戦することに。
このビジュアルでしかもイギリスの食べもの。。。。なんか濁った液体に入ってるし、色もヤバイ。大体イギリスで見た目よりもまずいものはいくらでも知ってるが、見た目よりうまいものなんて見たこと無い。久々に本能が危険信号を鳴らしている。そんな未知との遭遇であった。

みんな大好きなのだろうか、結構イギリス人がブースにたかっている。小さな紙袋の中に酢卵とポテトチップを入れ、中でポテトチップを粉々にして、袋の中でシャカシャカして食べている。
確かにコクばかりでキレの少ないまったりしたイギリスのエールには、キュッと酸っぱい卵は相性がいい。でもなあ。ドイツ人がソーセージで、スペイン人がタパスでビールを飲むのとはえらい違いなんだよなあ。

最近イギリスの食べ物には驚かなくなったのだが、久々にやはりすごい文化だと思った出来事だった。

イギリス恐るべし。

だから僕は肉を焼く

fire夜中の23時。俺は肉を焼いている。
オーブンの灯りが静まり返ったキッチンに寂しげに仄めく。

肉が食べたいからではない。
明日娘に食べさせる肉を焼いているのだ。

今週日曜日から1週間、妻が日本出張に行っている。残された自分と娘。
今日は2日目の晩が終了。ここまでは全て自分で対応した。

明日は小休止。ナニー(ベビーシッター)にお願いして、ナーサリーの迎え、食事、風呂、寝かせまでお願いする予定。
自分はすこし遅くまで仕事をして、普段見ぬロンドンの夜の街をぶらついて帰ろうかと思っている。

ところで、ナニーに子供の食事をしてもらえるといってもご飯の用意はコチラでしておかなくてはならない。shiokoji_chickenとりあえず明日の子供の夕食は、妻が作り置いてくれたものと、今焼いている鶏肉の塩麹漬け。作り置きはインゲンの胡麻和え、高野豆腐。味噌汁はフリーズドライのインスタントに。

勿論作り置きをしてくれた妻には感謝なのだが、自分と子供の2人だと、楽な面も実はある。
一番は炊事の手が抜けること。家事・育児における炊事の負担はハンパないのだ。

だから、子供の分さえきちんと食べさせれば、自分は正直どうでもいい。晩御飯はビールにピーナツとか、ワインにチーズとか、ちょっと小腹が空けば辛ラーメンにもやしをいれればそれで十分。

子供の食事でさえ、買えば済むソリューションも日本ほどではないが、それなりにある。例えば冷凍餃子、日本製だけでなく、韓国製や中国・香港製も合わせると結構なバリエーションがあるし、とくに中華圏の水餃子は美味しい。子供も大好きである。

そしてピザ。こちらのピザは4−5ポンドで具だくさんな冷蔵ピザが売られている。これをオーブンで焼けば日本の配達ビザとほぼ変わらぬクオリティのピザが食べられるので、自分は赤ワインでも開けて、これを娘とシェアすれば十分。

あとは乾麺のうどんやひやむぎ。細かく刻んだニンジンや白菜をうどんスープで煮込み、うどんを合わせるだけ。野菜があまり気にならない形で食べてくれるのが良し。

20分経過。ひとまず完成。ネギっぽく見えるのはリーク。ネギより大きいので、写真では鶏肉が小さく見えてしまう。これで明日は安心だ。とりあえず焼き鳥臭くなった身体をシャワーするか。今日は娘はぐっすり寝ているようだ。

 

ひとりぼっちの夜。ちょっと幸せ。

アルハンブラの思い出スープ

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アルハンブラの思い出

思い返せばもう1年以上前、昨年6月に母をスペインに連れて行った。バルセロナからアルハンブラ宮殿のあるグラナダ、そしてミハスという行程、家族全員ではなく、当時専業主夫だった私が、ロンドンに遊びに来ていた母を連れ、子供の面倒を妻に託し、生まれて初めて母子二人旅をしたのだ。

その時、グラナダで食べた思い出の味。それがこのスパニッシュスープ。
served

思い返すとグラナダ到着当日は大変だった。LCCの貧乏旅行ゆえ、バルセロナからグラナダのフライトが大幅遅延し、我々はヘトヘト。その後空港から乗った市内までのバスの降りる場所を間違えて、一つ先まで進んでしまい、タクシーも捕まらない中、大きなスーツケースを引きずり、トボトボと歩いてホテルに向かう羽目に。

夜9時をまわり、日もすっかりくれてきた。さすがに六十過ぎの母は限界を迎えたため、歩いている途中に見かけたレストランに入ろうと叫びだした。

それはよくある広場の観光客向けレストランと言った風情。正直私は不満たらたらだった。旅行の貴重な楽しみの一つであるメシというイベントを、ネットで口コミも確認もせず、こんなリスキーな状態で迎えたくはなかった。

だが、そんなことは言ってられない。仕方がないので、前菜のスープと、サラダ、そして普通に肉を頼んでさっさと食って、ふて寝でもするか。ホントはパエリアとか、タパスとか食いたかったのに。

と思っていた矢先であった。

ここで適当に頼んだ本日のスープが、とてもうまかったのだ。

見た目は単なる野菜スープでピンとこなかったのだが、味は最高だった。ドライソーセージが入っており、そこから抽出されたと思われるダシがガツンと効いている、そしてホウレン草がクタッと入って口当たりが良い上少々ほろ苦い、最後に細かく切ったゆで卵が入ってコクや深みを加えている。

特に最後のゆで卵が入っていることに驚いた。折角の透明なスープが黄灰色っぽく濁ってしまうのである。中華スープの溶き卵なら許せる、ふわふわな卵がまるで白糸の様な繊細さを以ってスープの主役を演じている。

翻ってこちらはただの粉っぽい黄身と、細かく砕けたプリプリの白身が、普通に食べればそこそこ美味しそうな野菜コンソメスープに渾然と浮かんでるのである、日本人の美的感覚からはありえない。

だが、ゆで卵が入らないと美味しくないのである。

その後ロンドンで英語やスペイン語のレシピを研究し、自分なりのレシピをまとめた。一応備忘録的に記しておきたいと思う。

スパニッシュスープ・レシピ

  • 材料(4人前)
    • 水      720ml
    • サラミソーセージ     150g
    • にんにく     1カケ
    • ローリエ   2枚
    • ベーコン(もしくは厚切りハム・ソーセージ)100g
    • ★玉ねぎ 1/2玉、みじん切り
    • ★セロリ 一本 小口切り
    • ★ひよこ豆   1/3缶
    • ★じゃがいも 1個、1センチのダイス状
    • ★マッシュルーム 3−4個、薄切り
    • ★種無しオリーブ塩水漬 7−8個、薄切り
    • ホウレン草(ベビーリーフ)3掴〜4掴み、たっぷり
    • ゆで卵 2個、みじん切り
    • 胡椒

作り方

  1. サラミを細かく1センチ角の大きさにカットし、にんにく、オリーブオイルと一緒に炒める。
  2. 脂がでてきて、こうばしくなったら、水720mlとローリエを入れ、圧力鍋で10分圧力、その後蓋があくまで放置。脂が多い場合は、蓋を開けて脂を多少取り除く。
  3. ★の野菜とベーコンをカット。野菜は必ずしも指定のものでなくても良い。正直なんでも良いと思う。下の写真ではひよこ豆がなかったのでプチトマトを入れてみた。ベーコンやハムを入れるのは肉っぽい食感がほしいから。
  4. 3番を2番の中に投入、中火で煮立ててアクをとり、その後圧力をかけて再度加熱、やはり10分圧力、その後放置。
  5. このタイミングでゆで卵を作り、カットする。cut_egg
  6. 蓋が開いたら、圧力無しで加熱しながら、ホウレン草をちぎって投入、塩コショウで味を調節しながら、5分程度煮込む。
  7. ホウレン草がクタクタになったところで、最後にゆで卵を鍋に投入。完成。

召し上がれ!

served

合わせる主食はご飯ではなく、是非美味しいパン屋のバゲットでいただいて欲しい。バターは自分のお気に入りのPresident。そして合わせるお酒は白ワイン。今回はドイツのリースリングで。

辛くないので子供もとても喜ぶ味。翌朝二日目の煮詰まったスープも美味い。

時短レシピ

面倒くさい人は、サラミを炒めた後、全ての材料を一度に鍋に入れ1回でスープを作ることも出来る。但し、自分が比較した感想では、美味しさでは微妙にダシ汁と具の工程を分けたほうがスープの味がしっかりするような気がしている。

 

イギリス人はスモーキーがお好き

個人的感想として、イギリス人の食べ物の味の好みは文化的子孫であるアメリカ人の味に基本的に似ている、しかしアメリカ人より少々大人、しかも男性的な味付けが好みのようだ。

ケチャップなど調味料はアメリカは甘みが強いが、こっちは甘みが少なく酸っぱい。ポテトチップス(こちらではクリスプスと呼ぶ、チップスはフレンチフライのこと)は塩味と酸味が効いているソルト&ビネガー味かバルサミコ味がこの国の定番。

しかしながら、この国の味付の男性的特徴はおそらくスモーキーフレーバーによるところが一番大きいだろう。調味料、ハム・ベーコンに始まり、魚の切り身、お酒、お茶ととにかく何でもスモーキーにしてしまう。そしてこの国のスモーキーフレーバーは半端ない。日本人が一般的に想像できる、炭焼や燻製のほどよい香りというレベルではなく、焚き火の煙をもろに吸い込んだ時のような香りが好きなのである。このあたりもアメリカのBBQ的なスモーキーフレーバーとは違いがあるようだ。

まあ、このスモーキーさもしょっちゅう味わっていると、どんどん中毒のように強烈な香りを求めるようになってしまうから恐ろしい。ここに幾つかイギリスの味を紹介する。

アイラ・モルト

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ご存知ボウモア、ラフロイグ、タリスカーなどに代表される、ピート香が強烈に漂うシングルモルトウイスキー。NHKの朝ドラのマッサンが「あのスモーキーフレーバーを再現したいんじゃ!」と言っていたのが記憶にまだ新しいが、日本人的には初めて口にすると石油石炭、もしくは消毒薬のような風味にぎょっとしてしまう。

ラプサン・スーチョン

LapsangSouchong
source: wikipedia

アッサムやダージリンとかアールグレイなどと同じ、紅茶の一種。中国産だが中国人は飲まないらしい、勿論日本でもあまり見かけないが、こっちでは普通にトワイニングのティーバッグがスーパーで売られている。この茶葉の香りは強烈、まさに紅茶界のラフロイグ。茶葉を松葉でいぶしているので茶葉が焚き火臭い、燃えカスかと思うくらいである。煮出したお茶はもはや焚き火に水をぶっかけて鎮火したあとの地面の水の様だ。特に私は子供の頃松の木が多い海岸沿いに住んでいたこともあり、焚き火は松葉を燃やしていることが多かった為、より鮮明に焚き火っぽく感じてしまうのかもしれないが。

スモークチーズ

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source: wikipedia

日本で売られているようなソフトタイプで表面がキャラメル色になっているあのおつまみチーズではない。もちろんあのような食べやすいスモークチーズもあるのだが、スーパーでジャーマンスモークチーズと書いてあったので、イギリス風ではないのではなかろうか。イギリス風はハードおよびセミハードなチェダーチーズに焚き火の香りががっつりついている。チーズ臭さがわからなくなり、旨味が引き立つような気がするのは良い点ではあるのだが、問題はスモーキー過ぎてワインとマリアージュしないこと。とくに赤ワインは味と香りがチーズと喧嘩して全く美味しくなく、チーズの主張に無条件降伏する安物の白ワインで十分である。むしろワインよりこちらのペールエールや、ギネスなどのスタウトビールと合わせたほうが美味しい。

タラの切り身の燻製

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スモークドハドック(小さめのタラ)、スモークドコッド(真ダラ)として売られている魚の切り身の燻製。燻されて白身の魚が真っ黄色である。これは焚き火っぽくはないのだが、さりとてスモークサーモンのような上品な雰囲気はまったくなく、ベーコンのような燻香の干物。淡白なタラの身が乾燥することで旨味が凝縮し、スモーキーフレーバーがさらに掛け算の如く旨味を引き立てている。バターで単に焼いてレモンをかけて食べても美味しいが、我が家では身を多少ほぐしてグラタンの具にする。スモーキーな大人のグラタンはビールのお供にピッタリなのである。

スモークドソルト

smoked_salt
source: wikipedia

煙臭い塩である。塩が燻されて黒っぽくなっている。これをふりかけると簡単にスモーキーな料理のできあがりとなる。肉にかけるとベーコンのような風味になって美味い。家でステーキを焼くときの下味は専らこの塩と胡椒を多めに刷り込んで焼く、すると肉の味と塩味だけで十分美味しく、ソースが不要になるほど。