子連れマルタ・ゴゾの旅 その1/2

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3月のマルタは暖かい!

34日でマルタへ旅行に出かけた。マルタはイタリアのシチリア島の南、緯度ではもうアフリカ。日中の気温18度、夜は12度。風が吹くと肌寒くてコートが必要だが、日中の日差しは刺すように強く南国そのもの。晴れていればTシャツで過ごせる。例えて言えば真冬の東京から温暖な石垣島あたりにやって来た感じに似ている。

リゾートホテルでのんびり

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日頃Airbnbで旅している我が家族だが、今回久しぶりにホテルステイを楽しんだ。今回の目的は街歩きではなく、のんびりおひさまに当たること。3月はオフシーズンなのでホテル代が安い。宿泊先のCorinthia Marina Hotel1ベッドルームのスイートが通常の半額以下で泊まれることもあり、子供の寝かしつけのためのリビングと寝室の分離環境もきちんと確保できたことも大きい。後述するがマルタは交通機関が基本タクシーに限られてしまうので買い出しとかしなくて済むホテルのほうが子連れには楽。子供にはサトウのごはんを持参したので、こちらを温めてもらうことも出来た。

世界遺産ヴァレッタは素敵な街

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世界遺産に登録されている城塞都市ヴァレッタは思いのほか街が綺麗で景観がなにより美しい。通りから港が見下ろせてとてもロマンチック。勿論ベビーカーでの散策も問題なし。

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港の対岸にも砦が見える。ライトアップされてとても雰囲気が良い。

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マルタは十字軍で活躍した聖ヨハネ騎士団に端を発する敬虔なカトリック教国。ちょうどイースターの1週間前で、キリストが磔刑に処された日に当たる為、子供からお年寄りまで装束を身にまとい、マリア像を担いだ厳かなパレードが行われていた。

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近くの教会ではミサがとり行われていた。

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マルタはご飯が美味しい

マルタは1814年にイギリス領となり1964年に独立するまでの150年間で、英語が公用語となるなどイギリスの影響が強くある。ツアーガイドのマルタ人曰く、マルタの人々はイギリスに好意的で、本当は独立はしたくないという国民も多かったとか、多くのマルタ人がイギリス海軍で働いていたため、独立してむしろ仕事がなくなったらしい。いまでもマルタはイギリス連邦の一員である。

従って、食事に関してもイギリスっぽい食べ物がちらほら見かけられる(パイとか白身のフライとか)。しかしおしなべてご飯は美味しかった。

ホテルの中はイタリア人ばかり。イタリア人にとっては身近なリゾート地なのだろう。彼らに鍛えられているため、ご飯が美味しい。食事に関してもイギリスっぽい食べ物がちらほら見かけられる(パイとか)。コーヒーも味も香りも濃くて美味しいし、パスタはきちんとアルデンテを保っていて、とても安心して食べることが出来た。

おすすめはヴァレッタにあるハーバークラブ。港の目の前にあるジャズ・クラブ兼レストランで、モダンなマルタ料理が楽しめる。薄暗くムードが良すぎてお客さんはカップルばかり、ちょっと子連れでは気が引ける雰囲気だったが、ハイチェアの用意もあるし、快くもてなしてくれた。

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メインの豚肉。ロースの柱が3本直立していて、中央の神殿は脂身のあるバラ肉?の塊。それをニンジン君たちが見上げてる。結構なボリューム。

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マルタワインはレストランでも15ユーロ程度からと安い。白はシャルドネもミュスカもさっぱり軽い印象だったけど、このシラーズの赤は南国らしくフルーティでしっかりとしたボディが感じられた。

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マルタご飯は特盛

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ホットドッグを頼むと山盛りポテトとこれが出てくる

WHO(世界保健機関)によれば、マルタはEU内で一番肥満率の高い国だそうだ。それも納得。いちいち出てくる飯の量が半端ない。パスタ一皿で2.5人分位の量が出てくる。ホットドッグを頼むとフルバゲットサイズでやってくる。イタリアンレストランでは一人前のタコのリングイネを二人で分けるように注文、お店は快く応じてくれたが、それでも一皿に出てきたのは日本だったら大盛りの量、大ぶりのタコも目一杯入っている。残念ながらとても美味しいので残すことが出来ず、これですでにお腹いっぱい。次のメインが食べれなくなりそうだった。

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一皿を分けても日本人には大盛サイズ!

残念な公共交通機関

マルタ内の移動に関して言えば、この国には鉄道はないので、路線バスかタクシー。となると基本の移動はタクシーになる。但し問題はタクシーメーターが設置されておらず、料金体系が不明瞭なこと。空港からホテルまでは前払い制、空港のタクシー乗り場でチケットを購入することになる。11キロの距離が20ユーロだった。それ以外の場所では日本と同じく後払い。ホテルから旧市街は7キロ程度で15ユーロ(1,900円だったので、日本並みにタクシー代が高いといえる。気軽につかえる金額ではない。又、バーが連なる繁華街のPacevilleに出掛けた際、丁度滞在時にアイルランドの祭日であるセント・パトリックス・デイの祭りとぶつかった為、街が大混雑。あらゆる通りが若者でごった返していており、我々子連れ家族が歩くのもままならなくなった。仕方なくタクシーで帰ろうとすると、たった1.5キロの道のりが15ユーロとふっかけられた。最終的には妻がネゴって12ユーロになったが全くひどい話である。

(ゴゾ島の紹介へつづく)

テムズ川とビール工場見学

娘を保育園に預けて3週目に突入。最初の週は毎日だったけれど、その後は週2日のペースの為、なかなか親離れ出来ない。先週の朝は保育園に近づくとイヤイヤ言い始め、先生に預けると「パパー!パパー!」とこの世の別れのようにギャンギャン泣き出してしまう。私としては預ける以上先生を信頼し、さっさと出てきてしまうのでその後を案じることもなく、頭を次の事に切替えてしまう。ただ、初めて丸一日預けた日のお迎えでは、教室内で死んだ魚のように焦点の合わない目で座っている娘を見て、「なんてかわいそうな目に合わせているんだ俺は。」とても心苦しくなった。あの目は衝撃的すぎて今でも思い返してしまう。

そして3週目の今日も預ける際に泣きわめくんだろうなと内心ドキドキしながら保育園にいったら、初めは私の足元にギュッとしがみついていた娘も、一切泣いたりわめいたりせず、最後には先生に抱かれながらこちらをバイバイして送り出してくれた。そんな娘を見てほんとうに頼もしくなったと嬉しくなる。

ところでパパが一人になった暁には、娘には申し訳ないが、いままで我慢していたロンドン観光をさせてもらいたいのである。そこで今日はテムズ川散策をしつつ、ロンドン最大のビール醸造所である、Fuller’s Breweryに工場見学に行くことにした。

Underground District線のHammersmith駅からテムズ川岸に出る。写真はHammersmith Bridgeとテムズ東方面を臨むショット。今回向かう方向は写真の逆側、西方向に進んでいく。hammersmith

風も無くおだやかな天気。駅中のピザスタンドで買った一切れのピザを頬張りながら、川べりの遊歩道を進む。

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途中、川沿いにパブやカフェが立ち並んでいる。気持ちよさそうだがまだ気温は8度くらいなので、外でお茶をするのはしんどい。

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最近は随分と日も長くなり、春の兆しが見えてきている。これは満開のマグノリア(木蓮)。

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鳥さんもこんにちは。

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途中、道が川沿いから離れ、建物に挟まれた細い路地に変わる。すると、今回の目的地Fuller’sの名前とそのシンボルのグリフィンが掲げられているパブ”The Dove“を発見。地球の歩き方にも載っている有名店らしい。一杯飲みたい気持ちが盛り上がってくる。わくわく。でも我慢我慢、ビール工場までは。

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そして駅から歩くこと30分、フラーズ醸造所に到着。

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ツアーは完全予約制。ウェブでの申し込みとなる。なぜか1日前以内程度の直前だと、画面上でスロットが空いているのに決済段階でエラーが出て予約が取れないというバグ?が発生するので注意。日数に余裕を持って予約すべし。中では1.5時間ほどかけて、醸造所の成り立ちからビール醸造工程の説明を受けることが出来る。ここは中世の頃からビールづくりが始まっている歴史のある醸造所。今ではヒースロー空港から車でロンドン中心部に高速道路で来る場合必ず通る場所にある。このようなロンドン市内のコストがかかる立地でも、移転をせず歴史を重ね続けているのは家族経営だからとのこと。
tour

ツアーの最後はお楽しみの試飲タイム。25分間13種全ての銘柄を好きなだけ飲むことが出来る。原料にこだわり手間ひまかけて造られたビール、工場見学後だと一滴も無駄にするのがもったいない気持になって、一杯ずつしっかり飲んでしまう。180mlくらいの小さなグラスなのだけれど、4銘柄でギブアップ。もったいないおばけのせいで戦略を誤った。写真の右端にあるポイ捨てケースにどんどん捨てて次の銘柄に移ればよかった。。。

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個人的なおすすめは看板商品であるペールエールLondon Prideとよりパンチの効いたESB、ブラジル産はちみつをふんだんに使って仕込んだゴールデンエールHoney Dew。ぜひお試しあれ。

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フラーズ醸造所

ブラック・プディングを食す

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イギリスに来てみると噂通り微妙な食べ物が多い。ソーセージはその一つ。日本人ならソーセージといえばウインナーソーセージ。プチッ・パキッとした皮の感触と、プリっとした肉感に慣れ親しんでいるので、コシのないブリティッシュ・ソーセージはまるで地球外生命体のよう。これには肉以外にラードやパン粉がたっぷり詰まっているので、生の状態はムニュっとスライミーな触感。フライパンで焼くとパンパンに膨れ上がり、カブトムシの幼虫のよう。しかも一本から大さじ一杯の脂が滲み出してくる。そして食感はブヨブヨ。肉なのかつなぎなのかよくわからない。決してまずくないのだが、とりわけ旨いわけでもない。イギリスもドイツも元をたどればゲルマン人、なぜ海を隔てるとここまでソーセージの解釈が変わるのか分からない。

ブリティッシュ・ソーセージだけでなく、ブラッド()ソーセージの一種、ブラック・プディングもイギリスらしいソーセージの一つ。実際ソーセージという名前がついていないだけに、肉が入っていない。中身は豚の血、豚の脂身、オートミール、にんにくなどの香味野菜とスパイス。「何故肉はない?」という気持でいっぱいになる。

とはいえ、ブラック・プディングはイギリスの朝食の定番。地元の味を試すべく、スーパーに買いに行った。これに限らないのだが、安い加工食品を買うと確実にまずいので一番高いブラック・プディングを購入。それでも10センチ強のものがたった2ポンド。スーパーのPB品が1ポンドなのでそれほど高くない。原材料がリサイクル品みたいなものだからそんなもんだろう。

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のんびり起きた週末の朝食に、焼いて食べてみることに。切ってみるとこんな感じ。白い部分は脂身と穀物のようだ。ブリティッシュ・ソーセージほど脂ぎってはいないので少し安心。

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まずくて食べれなかった時のバックアップ用のベーコンと一緒に焼いているの図。本気で保険かけてます。。。火を通すと穀物部分が膨らんで粒が大きくなってくる。問題発生!焼く前も後も真っ黒なので、食べごろが全くわからない。。。。

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なんとなく火が通ったぽいので、調理完了。これだけだとあまりに貧相なので、目玉焼きとベーコンとベイクドビーンズも盛りつけて、イングリッシュ・ブレックファーストの出来上がり。いやー、どうです?この完璧なビジュアル。勿論イギリス人なら垂涎モノでしょう。

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ブラック・プディングのお味はというと、割りと美味しかった、というのが感想。脂っこくないのがまず好印象だった。味もそれほど血の味の癖がなく、あっさりしている。まあ、そもそも期待値を相当低く見積もっていたからなのだけれど。。。

UKのスーパーあれこれ

家事・育児が主夫の戦場に喩えるのであれば、兵站はスーパーマーケット。勿論アジア食材スーパーは重要だが、ちょっとした買い足し、野菜や肉、洗剤などの消耗品の調達でほぼ毎日お世話になっているのは英国系スーパー。こちらでは4大スーパーチェーンと呼ばれる、Tesco, Asda, Sainsbury, Morrisons4つがメジャー。これらだけで市場のほぼ7割を占めている。その他ロンドン都心でよく見るのは高級志向のWaitroseMarks&Spencer(M&S)

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Wikipediaより作成。

それぞれ雰囲気も違えば客層も違う。個人的な感想を交え、幾つか紹介してみたい。

#1 Tesco (シェア28.4%)

sainsburysテスコはウォルマート、カルフールについで世界第3位の小売業。日本にも一時期日本のスーパーを買収して進出していたけれど現在は撤退済み。ロンドン中どこにでもある印象。都心の店舗は小規模でコンビニサイズだが、郊外店はガソリンスタンドも併設されていたりしてとても大きい。店内は白地を基調に至ってノーフリルで平凡な雰囲気に感じる。

#2 ASDA (17.1%)

asdaアスダ。なんだかインド系とかアジアっぽい響きに感じてしまうのは私だけ?ロンドン中心部には店舗は存在せず、郊外に大きな店舗を構える。食料品だけでなく、日用雑貨、DIY用品なども売っており、スーパー+ホームセンターといった田舎っぽい庶民的な印象。来ている顧客もアジア系、アフリカ系など様々な人種が来ているイメージ。

#3 Sainsbury’s ( 16.9%)

sainsburysASDAに対し僅差でシェアを追っているためか、ASDAに敵意むき出しなスーパー。会計の際、レシートと一緒に、「今日の買い物はASDAで買った場合より◯◯ポンド安くなっています」みたいな報告をもらえる。郊外では大型店舗、ロンドン中心部ではコンビニサイズの店舗を展開しているのはTescoと一緒だが、若干Tescoよりも店内の雰囲気が高級に感じる。PB商品が充実しているからだろうか。

#4 Morrisons ( 10.9%)

morrisonsASDAと同じく、庶民的な印象。都心の店舗では白人より有色人種系の顧客が多いイメージ。割りと酒コーナーが充実している。店舗デザインは緑と黄色を基調にしており、他店の白っぽいイメージとは若干異なる。PB商品は見かけない。店舗入口にドーナツやカップケーキが並んでいたり、菓子コーナーには大手メーカーの大袋のポテトチップやドリトスなどが陳列しており、身体に悪そうだけど思わず手を伸ばしたくなる。なんだかアメリカのローエンド向けスーパーを想起してしまう。

上の4つでは、我が家が日常利用しているのはSainsbury’sMorrisons
その他利用するのが、高級スーパー。

#9 M&S (Marks&Spencer) (3.8%)

MandS-entranceMarks & Spencerは英国の百貨店。百貨店はショッピングモールなどに入っていたりするのだが、その食料品コーナーだけがスーパーとして街中にある。酒、冷凍食品、菓子などほぼ店内全てのカテゴリーにおいてM&S印のPB商品を並べており、ブランド統一感が感じられる。

marks-and-spencerまた店内デザインが黒を基調にしており、写真の見せ方なども洒落ているので上品かつ食べ物が美味しそうに見える。プロデュース能力が高い。当然ながら値段は高い。立地にもよるが、中〜上流階級のマダムが来ている印象。

#8 Waitrose (5.1%)

waitrose_exteriorJohn Lewisという英国の百貨店の傘下にある高級スーパー。英国王室御用達なのでブランドイメージは抜群。特に生鮮食料品に安心感がある。駐車場にはベンツやジャガーやテスラが停まっていたりと、このスーパーがあるエリアはそこそこ社会的ステイタスが高い人が住んでいるんだろうなと推測できる。顧客に対し、会計後コーヒーを無料で一杯プレゼントするサービスなど、全従業員はパートナーとして経営参加している為、スタッフによる丁寧なサービスが特徴になっている。

waitroseだが、しかし、個人的にはお高く止まりすぎて鼻に付く。店内は白っぽすぎて無機質、M&Sのほうがフレッシュ感、シズル感がある。そんな私はただの庶民。ところで個人的な感覚ではWaitrose>M&S>>>>Tesco=Sainsbury’s>Morriosons>ASDAかな。本当のところはどうなんだろう?

あるイクメンの悩み

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「ああ別居だ」
「別居しよこれ」
「しんどい」

Aはチャット上で突如切り出し始めた。

まあまあ、ちょっと待て。まだ何かやり直す方法があるんじゃないかな。子供には罪がないし、1歳になって間もない子供が可哀想だし。

「子供に罪ないですけど、半分あいつなのかと思うと愛情うすれるんすよ」

最近、主夫をやっているお陰で、男性からの家庭・仕事両立について相談を受けることがあるのだが、この件は重かった。

Aは(男性、30代、仮称)は元同僚。2年前に結婚し、奥様、現在13ヶ月の男の子が一人の3人家族。

Aの奥様の頑なな子育てポリシーによって、夫婦関係に亀裂が入り始めているという。そのポリシーとは、「保育園に通わせるのは子供がかわいそう。親の手で育てたい。」というもの。保育園に通わせるのがかわいそうかどうかは極めて主観的な話で私は賛同しかねるが、まあ人それぞれ価値観がちがうからそれでも良しとしたい。

しかしながら、Aが困窮しているのは、奥様がその上で仕事との両立をしようとしていること。奥様はサラリーマンではないので仕事のフレキシビリティはあるものの、自信が家を空けることもしばしばある。そのばあいはAが会社を自宅勤務にして子育てに当たることになっている。

勿論常識的には、これで仕事が手につくはずもなく、実際子供の面倒で手一杯になり、在宅といいながら欠勤同然になってしまっている。だからこそ、Aは奥様に保育園に通わせることを提案しているのだが、聞く耳をもってもらえない。

奥様としては、夫の仕事の馬力を落としてでも子供の面倒に当たって欲しいという希望があるようだが、一方都内の一等地にマンションを持ちたいという希望も捨てていない。

夫であるAとしては、仕事も育児も稼ぎも自分の思い通りに無理を通そうといている妻の分別のなさに辟易してしまっているようだ。仕事はすでに支障をきたすレベルに近づいている。公私においてAの疲労も溜るばかりだ。

Aは振り返る。どうしてこうなっているのだろう。

子供が出来るまでは良かった。子供が出来てから妻の見えなかった価値観ずれや優先順位の付けられぬおかしな思考が露わになってしまった。

子供中心で夫の存在は薄い。これからどのような生活を築いていくかを横において、稼ぎの柱となるはずの夫の仕事を軽く見ている妻の態度にも不満がある。週に2回は妻側の両親がやって来て、親娘の大騒ぎが始まる。まるで妻の実家。落ち着く場所も無い。全て子供を理由に自分の存在がこの家から消えかかっている。楽しい事なんて全然ない。子育てってもっと生産的で、楽しい共同作業じゃなかったっけ。

Aの親には相談したのか?と私は尋ねた。なんとか奥様の理解を得るには親同士を巻き込んで行くしか無いのではないか、そう考えたからだ。

「親にも相談しましたよ。『初孫、かわいいけど、そんなんなら諦めるからまたいい人みつけてもう1人つくりな』って。」

おっと、軽いな。私はちょっと拍子抜けというか、あまりの潔さにこちらが動揺してしまった。でもきっと奥様方の家庭や、奥様の性格、いろいろ勘案して議論した結果なんだろう。

そして冒頭の別居のくだりが始まった。

「もう半年前から別居を考えているんですよ。」

Aは相当追い詰められている。心にまったく余裕はなさそうだ。

話を聞いていて、もはや子育ての夫婦での分担などの話ではなく、そもそもの家族のあり方の問題だ。

「なるほど、そこまで覚悟があるならパフォーマンスとして別居もありかもだね。」

「やっぱりそこですかねえ」

「こちらの言いたいこと、やりたいこと、奥さんにお願いしたいこと、きちんと伝えた上で、平行線なら、頭を冷やしてもらう」

「パフォーマンスでなく本気で終わりにしたいんすけどね。。。。ダメだな俺もそんなんだと。。」

「まあそこまでの覚悟があるからこそ、本気で相手とぶつかっていけば良いんじゃない。変わらないならそれこそ終わりだよ。」

「そうすね。」

チャットが終わる。ふう。なんかすごく疲れた。時計を見るとあっという間に1時間半が過ぎていた。

奥様の考えが頑な過ぎるという断罪は簡単だろう。でもきっと彼女にも言い分があるはずだ。初めての育児に対するおおまかな不安から、我が子を家族の目から離すことがどれだけ心配か。それを踏まえた思いやりを夫は見せているのだろうか。子供のことを考えたら、父としてもっと彼にはやるべきことはあるのではないか。

疲れたのは自分が本件に無力だったことだろうと思う。結局自分にはAと家族、そして一番かわいそうな子供を救えることは出来そうもない。なるようにしかならないのだろうか。

読者の皆様はどう考えますか?