だから僕は肉を焼く

fire夜中の23時。俺は肉を焼いている。
オーブンの灯りが静まり返ったキッチンに寂しげに仄めく。

肉が食べたいからではない。
明日娘に食べさせる肉を焼いているのだ。

今週日曜日から1週間、妻が日本出張に行っている。残された自分と娘。
今日は2日目の晩が終了。ここまでは全て自分で対応した。

明日は小休止。ナニー(ベビーシッター)にお願いして、ナーサリーの迎え、食事、風呂、寝かせまでお願いする予定。
自分はすこし遅くまで仕事をして、普段見ぬロンドンの夜の街をぶらついて帰ろうかと思っている。

ところで、ナニーに子供の食事をしてもらえるといってもご飯の用意はコチラでしておかなくてはならない。shiokoji_chickenとりあえず明日の子供の夕食は、妻が作り置いてくれたものと、今焼いている鶏肉の塩麹漬け。作り置きはインゲンの胡麻和え、高野豆腐。味噌汁はフリーズドライのインスタントに。

勿論作り置きをしてくれた妻には感謝なのだが、自分と子供の2人だと、楽な面も実はある。
一番は炊事の手が抜けること。家事・育児における炊事の負担はハンパないのだ。

だから、子供の分さえきちんと食べさせれば、自分は正直どうでもいい。晩御飯はビールにピーナツとか、ワインにチーズとか、ちょっと小腹が空けば辛ラーメンにもやしをいれればそれで十分。

子供の食事でさえ、買えば済むソリューションも日本ほどではないが、それなりにある。例えば冷凍餃子、日本製だけでなく、韓国製や中国・香港製も合わせると結構なバリエーションがあるし、とくに中華圏の水餃子は美味しい。子供も大好きである。

そしてピザ。こちらのピザは4−5ポンドで具だくさんな冷蔵ピザが売られている。これをオーブンで焼けば日本の配達ビザとほぼ変わらぬクオリティのピザが食べられるので、自分は赤ワインでも開けて、これを娘とシェアすれば十分。

あとは乾麺のうどんやひやむぎ。細かく刻んだニンジンや白菜をうどんスープで煮込み、うどんを合わせるだけ。野菜があまり気にならない形で食べてくれるのが良し。

20分経過。ひとまず完成。ネギっぽく見えるのはリーク。ネギより大きいので、写真では鶏肉が小さく見えてしまう。これで明日は安心だ。とりあえず焼き鳥臭くなった身体をシャワーするか。今日は娘はぐっすり寝ているようだ。

 

ひとりぼっちの夜。ちょっと幸せ。

ロンドン兼業主夫の日常生活

London_bus

イギリスで現地就職し、フルタイムで働き始めてから8ヶ月が経過。

それまでは日々の家事・育児をフルタイムで面倒を見てきたが、今年の初めからガラリと関わり方が変わった。

とはいえ、そもそも主夫として渡英した以上、家事・育児は半々で見ることに。とくに夕方の子供の迎えから夕食の準備については、メインで自分が担当することとした。とはいってもやはり妻が細かいところまでいろいろ手をかけてもらっているので、自分は半分も出来ていないとは思う。

以下は通常時における平日のスケジュール。

schedule

6時半:起床

目覚めからトップスピードでバタバタが始まる。まず子供を起こさず、自分の自由が利くうちに自分の弁当の用意をする。外食することも少なくないのだが、日本人の口に合う物が少ない事、食べに行けば普通に10ポンド程度はかかってしまう事を考えると、残り物や作りおきで弁当を作ってしまう事が多い。

その後、子供を起こす。大体機嫌が悪く「抱っこ~」と絡んでくるので、Cbeebiesという子供向けテレビ番組を点け、「イチゴのヨーグルト食べる?シリアルにする?パンにする?」と上手く機嫌をとり、食卓に着かせる。

妻が選んだ服装に着替えをさせて(服選びは苦手)、自分は妻や子供より先に出勤。

朝は妻がナーサリーまで車で送りに行き、一旦車を自宅に戻してから電車で出勤している。

8時:通勤

晴れている日は自転車、雨であればバスを利用。自転車ならば6.5キロ、25分で着くところ、ロンドンの劣悪な交通事情を反映し、バスの場合は50分かかる。但し、バスなら携帯の電波が常時入るため、2階建てバスの2階の一番前でロンドンの朝の景色を眺めながら、テザリングで仕事ができるというメリットもある。

9時:出社

健康な我が子に大感謝。ナーサリーから急に呼び出されたりすることは今のところ全くなし。また勤務形態については、週1回程度は自宅勤務にしている、集中して考えたり、作業をしたりするのは一人ぼっちのほうが効率が良い上、通勤時間を節約できるので有効時間も増える。

17時:帰宅

ナーサリーが18時までに閉まってしまうので、気持ち焦り気味で会社を出る。イギリスでは夜遅くまで預かってくれる保育施設は稀。なにせ子供は8時までに寝る国なのだ。

1740分:保育園ピックアップ

一旦家に帰り、米を研ぎ、炊飯器のスイッチを入れ、車に乗り込み、ナーサリーへ向かう。片道5分~10分弱。ナーサリーでは担当の先生から、一日の娘がなにをして遊んだか、お昼に何を食べ、昼寝は何時間だったかといった出来事を口頭で受け、その後名簿に退出のサインをして退園、帰宅。

1815分:帰宅・夕食準備

ここから寝かしつけまで怒涛の3時間が始まる。まずはすぐさま食事の準備。飯は帰宅までに何となくメニューを考えておくが、味噌汁などは冷蔵庫の残りを見て適当に具を決める。メインは30分程度で出来るような物を作る。短時間でカレーなどが煮込める圧力鍋が大変重宝している。あとは週末に塩漬けしたサーモンを焼いたり、中華炒め物など。

1845分:食事

ビールかワインを開け、小休止。子供にご飯を食べさせ、自分もご飯を食べていると妻が帰宅してくる。ここで娘の相手をバトンタッチし、自分は妻の食事の準備。

妻は洗濯機を回した後、食卓へ。

娘と妻が食べている間、先に飯を食べ終え、すぐさま自分の食器、キッチンの料理器具などを片付け始める。欧米ならではの巨大な食洗機がキッチンに装備されているため、鍋を含めほぼ全て入れてスイッチを押せばOK。手で洗い物をしなくて済むのは本当に素晴らしい。

この一方で、お風呂のお湯を入れ始める。

1945分:風呂

風呂は追い焚きなど出来ないので、このタイミングで入れるのは子供ともう一人だけ。妻と私では恐らく82くらいで妻が子供と一緒に入っている。子供が風呂に入っている間に、テーブルの残りを片付け、部屋のカオスなおもちゃを片付ける。でも一瞬一人になれるのでとても幸せな時間でもある。

風呂から上がってきたら、子供を着替えさせ、ドライヤー、歯磨きと一連の仕上げ作業に入る。

21時:寝かしつけ

寝かしつけは妻のタスク、とは言え自分も一緒に寝ることを子供に要求されるので一緒に寝室に入る。寝る前は本を読むのが日課なので、私と妻でそれぞれ読む。疲れているのでこちらも一緒に寝付いてしまい、気がつくと22時半~23時になっていてドキッとする。

23時:自由時間

洗濯物を夫婦で干した後、至福のひととき。仕事のメールを返したり、ネットを見たり、オンライン英会話したり、家計簿をつけたり、次の週末の予定を妻と計画したりなど、落ち着いた時間を過ごすことが出来る。仕事が忙しい時はこの時間も貴重なリソースに。

2時:就寝

風呂に入ってない場合は風呂に入り、就寝。

ーーー

ざっとこんな感じで毎日が飛ぶように過ぎていく。

夜の飲みはほぼ入れないか、入れたとしても、一旦帰宅し、保育園の迎えと夕食の支度を終え、妻とバトンタッチしたところで再度外出することがほとんど。本当ならば、夜の付き合いで増える人脈もあるだろうし、ロンドンだからこそチャンスは転がっているのだが、そこは逆に欧米っぽく割り切った。

逆に避けられないのは出張。最近自分の仕事内容が広がるなかで海外出張が多くなり、自分のライフワークバランス的には充実しているのだが、妻の負担が増えているのは申し訳ないところ。但しそこはなるべく回数を減らし日帰りや朝帰りなどで工夫をして両立をはかっている状況である。

バターナッツかぼちゃを食す

普段はお風呂と寝かせつけを妻に分担してもらっているのだが、妻の仕事や飲み会で遅くなる場合は夕食を適当に済ませられるので楽な反面、上記の世話を私がためものすごく辛い。しかも最近娘が昼寝をしてくれないので、途中休憩を入れることが出来ず、本当に辛い。

妻の帰りが遅くなる今日も、寝かせ付けに1時間格闘の後失敗。見切りをつけ、外の空気を吸わせる為スーパーに連れて行く。そこで山積みになっているbutternut squashというのが目に入ったので買ってみた。一個£1程度でお買い得だし、恐らくこれだけフィーチャーされているのはきっと旬なんだろう。

supermarket

細長く、ひょうたんみたいな形。ポルトガル産と書いてある。家で食べ方を調べると、あれ、日本でも結構流通しているのかな?見た覚え無いけど。バターナッツかぼちゃという名前で結構レシピがヒットする。

butternuts-squash

上下を分割し、下の部分を割ってみると、オレンジ色の美味しそうな色合いが現れた。

squash-cut

手間を掛けたくないので、冷蔵庫に余っていたパプリカと共に下半分をオーブン焼きにする。

squash-plate

でき上がり。今日の自分の食事は昼飯の残りとこれで終わり。子供にはご飯と味噌汁。

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若干メロンのような瓜臭さがあるが、普通に日本のカボチャと余り変わらない味わい。皮も薄くて食べやすい。食感はホクホクという感じではなくねっとりしてる感じ。こちらのじゃがいもも所謂メークイン系でねっとりしているのを考えると、日本人がむしろ芋やカボチャのホクホク食感を好んでいるんだろうな。

ジンボリーに入りました

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娘のナーサリーをどうするか問題に悩んでいる間、とりあえずジンボリーに通わせることにした。ジンボリーはモンテッソーリ教育をベースにした0歳〜5歳児向けの教室。日本でも広尾・自由が丘などに教室があって、先生は外人、しかも保育園ではないので親は同伴での参加が必要、つまりセレブな専業主婦じゃないとなかなか行けない場所なのだ。自分はセレブではないが、とりあえず子供には他の子と触れ合う機会を作ってあげたいのでサインアップした。

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Gymboreeの中。広いプレイグラウンドが室内にあって、滑り台などのアスレチックが揃っている。会員になればクラスが開催されていない時間帯は自由に使える。イギリスの冬は天候が悪いから、なかなか子供を公園で遊ばせられない。この時期には助かるサービス。

ロンドンのハムステッド教室は週一回、1回あたり45分で。4週間で£64。こちらでもなかなかのお値段。でも講師の調達コストが低いからか、日本よりは安いようだ。どこかのブログで見たが、日本では月18,000円くらいはするらしい。。。

クラスの内容はまあ、モンテッソーリだかヒゲソーリだか知らないが普通におゆうぎ。そんなにありがたい教育法なのかは私の目からは正直わからない。恐らくうちの娘にはもう一つ上のクラスのほうが良いのかもしれない。

IMG_5431こっちではこういった教室では定番のパラシュート。ママ達が輪になって歌いながらパラシュートを上下させる。そこに相変わらず黒一点の私。こどもは上に乗ったり、下に入ったり。これはしゃぼん玉を追いかけている娘。でも、歌になるとつまらないのか、アスレチックで一人でひたすら遊んでる。料金高いんだから先生と一緒にお歌でお手々をたたこうよ。。。

rolling

巨大な丸太状のクッションを転がす遊び。娘もこれになったら、アスレチックから飛んで戻ってきた。好きなのはアスレチック系ばっかりだな。

締めはGymboという、ジンボリーのマスコットキャラの登場タイム。めちゃくちゃ先生がもりあげるから着ぐるみが出てくるのかと思ったら、正体はなんと先生が戸棚から出してくるピエロのパペット(指人形?手人形?日本語は適当な言葉がないな)だった。お父さんはがっくり、娘は気持ち悪いのかドン引き。他の子どもたちはワーッと近寄っていくのを横目に、父娘で遠い目をしておりました。

そんなこんなで45分間。あっという間に終わる。まとめると以下の様な感じ。

  • 良い面
    • 子供の冬の間の身体を動かす場所として良い
    • 費用対効果は?だがナーサリーよりは遥かに安い
  • 悪い面
    • 週一回、45分では少なすぎる
    • 親が同伴で世話をしなくてはならず、自分は全く楽にならない

話し相手はオンライン英会話

london-street

話し相手がいない。

毎日スーパーのレジのおばちゃんに”No, I don’t need a bag.”とか”Thank you.”程度しか口にしない。娘は最近少しずつ言葉を話し始め、「あけて!」とか「抱っこ」とか「ジュース」とか日に日にボキャブラリーを増やしているとはいえ、嬉しくもこれは会話ではない。唯一の話し相手は妻くらい。

このことは渡英前に考えていなかったのだが、着いてみればそりゃそうだなと改めて認識した。とは言えイギリスに来てろくに英語も使わないようではしょうがない。したがって未だ渡英前から利用しているオンライン英会話を継続している。

フィリピン人とオンライン英会話を英語の本場ロンドンから行う。なんだか奇妙に聞こえるかも知れないが結構いいと個人的には思っている。

英語の勉強という意味では、オンラインでは学習、実際に街で実践というプロセスを踏めるので、日本にいて英語を学ぶより全然効率がよい。街に出て人と話してもそこはコミュニケーションの場。英語を教えてくれるわけではないので、英語脳の切り替えは別途やっておくべきだと思う。

そして主夫なので規則正しく受講できる。私はほぼ毎日夜の9時にSkypeをしている。夜9時は妻が子供を寝かせている時で、ようやく一日の中で私が一人の時間が持てる時間。フィリピンは翌朝の6時、講師のSkypeからはニワトリの「コケコッコー」という声が漏れ聞こえてくる。

そして最後かつ最大のポイント、毎日話し相手が出来ること。正直私自身にとってはこの部分が一番大きい。雑談相手が欲しいのだ。だから私は講師を選ぶときに、30代から50代の女性を頻繁に選ぶ。理由は子育てを経験しており、私が置かれている状況を理解し、共感し。助言をしてくれる可能性が高いからだ。

通常、自分の境遇、つまり私が妻の転勤で海外に来て主夫をしていると伝えるとビックリする。ただ次の言葉が “I admire you”と言ってくれる。照れくさいがありがたい。

そして私が毎日面倒を昼夜観るのはつらいとか、娘を昼寝付かせられなくてしんどいとか、一日中雨で外で遊ばせてあげられないとか、自分が仕事をしていないことに不安を覚えるとか、その他もろもろを赤裸々に吐き出す。

すると、「大丈夫、あまり思いつめずに行きましょう」とか「貴方の今していることは、非常に世の中にとって重要なことですよ。自尊心(self esteem)を失うこと無く、自身を持ってやってください。世の中の男性の殆どはしらないのです。女性がこれだけ大変かつ重要な事をしていることを。」などコメントを貰うことができる。こういった暖かい言葉でどれだけ勇気づけられたか。

だから私はオンライン英会話を続けるのだ。