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イギリス人はスモーキーがお好き

個人的感想として、イギリス人の食べ物の味の好みは文化的子孫であるアメリカ人の味に基本的に似ている、しかしアメリカ人より少々大人、しかも男性的な味付けが好みのようだ。

ケチャップなど調味料はアメリカは甘みが強いが、こっちは甘みが少なく酸っぱい。ポテトチップス(こちらではクリスプスと呼ぶ、チップスはフレンチフライのこと)は塩味と酸味が効いているソルト&ビネガー味かバルサミコ味がこの国の定番。

しかしながら、この国の味付の男性的特徴はおそらくスモーキーフレーバーによるところが一番大きいだろう。調味料、ハム・ベーコンに始まり、魚の切り身、お酒、お茶ととにかく何でもスモーキーにしてしまう。そしてこの国のスモーキーフレーバーは半端ない。日本人が一般的に想像できる、炭焼や燻製のほどよい香りというレベルではなく、焚き火の煙をもろに吸い込んだ時のような香りが好きなのである。このあたりもアメリカのBBQ的なスモーキーフレーバーとは違いがあるようだ。

まあ、このスモーキーさもしょっちゅう味わっていると、どんどん中毒のように強烈な香りを求めるようになってしまうから恐ろしい。ここに幾つかイギリスの味を紹介する。

アイラ・モルト

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ご存知ボウモア、ラフロイグ、タリスカーなどに代表される、ピート香が強烈に漂うシングルモルトウイスキー。NHKの朝ドラのマッサンが「あのスモーキーフレーバーを再現したいんじゃ!」と言っていたのが記憶にまだ新しいが、日本人的には初めて口にすると石油石炭、もしくは消毒薬のような風味にぎょっとしてしまう。

ラプサン・スーチョン

LapsangSouchong
source: wikipedia

アッサムやダージリンとかアールグレイなどと同じ、紅茶の一種。中国産だが中国人は飲まないらしい、勿論日本でもあまり見かけないが、こっちでは普通にトワイニングのティーバッグがスーパーで売られている。この茶葉の香りは強烈、まさに紅茶界のラフロイグ。茶葉を松葉でいぶしているので茶葉が焚き火臭い、燃えカスかと思うくらいである。煮出したお茶はもはや焚き火に水をぶっかけて鎮火したあとの地面の水の様だ。特に私は子供の頃松の木が多い海岸沿いに住んでいたこともあり、焚き火は松葉を燃やしていることが多かった為、より鮮明に焚き火っぽく感じてしまうのかもしれないが。

スモークチーズ

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source: wikipedia

日本で売られているようなソフトタイプで表面がキャラメル色になっているあのおつまみチーズではない。もちろんあのような食べやすいスモークチーズもあるのだが、スーパーでジャーマンスモークチーズと書いてあったので、イギリス風ではないのではなかろうか。イギリス風はハードおよびセミハードなチェダーチーズに焚き火の香りががっつりついている。チーズ臭さがわからなくなり、旨味が引き立つような気がするのは良い点ではあるのだが、問題はスモーキー過ぎてワインとマリアージュしないこと。とくに赤ワインは味と香りがチーズと喧嘩して全く美味しくなく、チーズの主張に無条件降伏する安物の白ワインで十分である。むしろワインよりこちらのペールエールや、ギネスなどのスタウトビールと合わせたほうが美味しい。

タラの切り身の燻製

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スモークドハドック(小さめのタラ)、スモークドコッド(真ダラ)として売られている魚の切り身の燻製。燻されて白身の魚が真っ黄色である。これは焚き火っぽくはないのだが、さりとてスモークサーモンのような上品な雰囲気はまったくなく、ベーコンのような燻香の干物。淡白なタラの身が乾燥することで旨味が凝縮し、スモーキーフレーバーがさらに掛け算の如く旨味を引き立てている。バターで単に焼いてレモンをかけて食べても美味しいが、我が家では身を多少ほぐしてグラタンの具にする。スモーキーな大人のグラタンはビールのお供にピッタリなのである。

スモークドソルト

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source: wikipedia

煙臭い塩である。塩が燻されて黒っぽくなっている。これをふりかけると簡単にスモーキーな料理のできあがりとなる。肉にかけるとベーコンのような風味になって美味い。家でステーキを焼くときの下味は専らこの塩と胡椒を多めに刷り込んで焼く、すると肉の味と塩味だけで十分美味しく、ソースが不要になるほど。


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