ママ達の乱(パパも少々含む)その4

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前回からの続き

娘が通うナーサリーの環境が良くないと、WhatAppチャットで盛り上がるママたち。ついに園長と円座になって話し合う機会が設定された。話し合いにてナーサリー側から改善案が出されたが、一方で失礼に感じるまでのSNS禁止令、集団抗議活動の禁止令が出された。まだ話し合いが園長と必要な人は個別ミーティングを設けるということになったのだが。

スタッフの退職

まだまだ、園と父母たちの熱が冷めやらぬうちに、次なる不安要素が現れた。我々のクラスの担当で男性保育士のKodaが病気で長期欠勤、そのまま復帰することなく辞めてしまった。一向に運営が安定する素振りが見えない。保育士リーダーのサマンサの本格復帰はまだ数週間後だと言うのに。一体どうしてしまったのか?

園長との個別面談

その3で展開した例の会合の2週間後に、リーダー格の保育士、サマンサは金曜日の遅いシフトのみの出勤からフルタイムに復帰。

彼女には3人子供がいて、そのうち2人は他のクラスではあるが、この保育園に連れてきて仕事をつづけている。見るからに大変そうではあるし、カオスな教室、親のプレッシャー、メンバーも一人欠いてしまっているという状況ではあるが、子供を預けている親の気持としては、彼女に頑張っていただくしかない。

その中で、園長のサンドラとの個別面談を実施した。これはあくまで任意のもので、前回の会合での論点ではなかった、各親が相談したい個別のイシューについて話をするというセッションであった。

自分は正直この個別面談に興味を失っていた。なぜなら前回で園長のサンドラが頑固で、とにかく考えを簡単に曲げるような人ではないことが分かったし、なおかつジェネラルな改善ポイントについては園側が既に対処をし始めているところであって、進捗を云々するような議論の余地がない。しかも園長、話が長いのだ。前回もずっと自分の仕事のポリシーや子供の教育観、ずっと脱線して喋っている。また同じパターンにハマるのではないかと億劫になっている一方、妻は鼻息荒い。

前回の会合に出ていないし、SNSの使用について集団的行動を禁じる失礼な物言いのメールに憤っている。まずはなんであんな失礼な書き方をするのか、問いただしたいとのこと。加えて、なぜKodaが病欠のまま、退職してしまったのかも確認することにした。

そして面談。

サンドラは案の定であった。

  • SNSへの誹謗中傷の書き込みは法的措置も厭わないとか、集団的反抗をに断固反対するといった失礼な物言いについては誤っていたが、そこ以外はあまり親の細かい心配を利くというよりは、私のやり方を信じなさいという自身満々のアプローチで話が進められた。またその話しぶりからは育児のプロというより、経営者としての園長の本音を聞いた感じであった。
  • 園の維持には優秀な保育士スタッフが不可欠。私が誇りにしているのはスタッフの退職率の低さ、採用にあたっても転職を繰り返すような人は採用しないし、最新の注意を払っている。また、彼、彼女らスタッフは国の最低賃金に近い賃金で仕事をしている。ちょっとした不満や問題があれば、別の仕事をしてもおかしくない。そういったギリギリの生活をしているスタッフのやる気をきちんと尊重し、続けてもらうのが大事。
  • 今回のSNSWhatsApp)の件については、最近入園されたお母さんが、交流目的のWhatsAppがあまりに園への不満や文句を並べ立てるネガティブな場になっていることに非常に不快感をもっていると私の方に連絡をもらった。こういったネガティブな空気は現場の先生にも伝わるもの。だからこういった動きはしないで欲しい。何か問題があるなら個別に相談に来て欲しい。
  • Kodaが退職したのは、こちらも予想もしておらず、びっくりしている。とにかく「疲れた」といって辞めていった。彼はサンドラがいない間、代理のリーダーとして頑張ってきた、これも一連のネガティブな雰囲気によるプレッシャーなのではないか。

面談を通じてわかったのは、園長のサンドラ的に重要なのは

従業員>子供達>>>親

のようである。まあ、ここは私立だし、Waitlistを作るくらいお客が来るわけだから、そうなるのも無理はない。要するに私のやり方に文句がれば他に行けと言うに等しい。顔はニコニコしているが、結構つっけんどんである。

しかしこの割り切り感、日本じゃ考えられないのでびっくりする。日本ではお客様は神様ですから。たとえモンスターペアレントでも。

その後のクラスの変化

サンドラが帰ってきてからは、大分雰囲気が変わってきた。部屋に秩序が戻り、月に1回は父母あてにメールでお便りをくれる様になった。近くのシティファームに遠足に行ったり、その写真を送ってくれたりと、園内での活動が見えるようにもなってきた。さすが当園の古株なだけはある。

拍子抜けのフォローアップミーティング

会合から1ヶ月半後、その第二弾とも言える、父母を一同に会したフォローアップミーティングが予定されていた。その前日、そういえば明日だよね、会社を早めに出て出席する、という妻の発言で思い出した。それまですっかり自分は忘れていた。Kodaの代わりのスタッフも補充され、環境も整備されたところでもうこの件はそれほど確認することもないし、追加の要望もなかったからだ。

この日がセットされたのは1ヶ月以上前なのに、当日になってもリマインドが来ない状況で、ホントにミーティングはあるのか無いのか、妻が質問をメールでしてみると、ちゃんとあるという。この問い合わせに背中を押されたのか、リマインドメールが開催数時間前に父母に送られてきた。

うわー、これ皆いま気づいただろうな、しかも開催時間が午後4時半だから、きっと出席率悪いだろうな。

そんな予感がした。

そして、予想は的中、というか予想以上に人が来なかった。なんと我々夫婦だけ。前回は12人出席だったのに、今回は2人。

リマインドメールをしない園側もいかがなものだが、どれだけ興味を失っているのか。前回息巻いていたママたちは今や見る影もない。

現状に満足できているという裏返しでもあるから良いのだろう。いずれにせよ、完全に鎮火してしまった園側の圧勝である。

最後に

結局、ちょっとした園の不手際やトラブルに対し、感情的になる親はある程度特定できる様になってきた。特に、自分たちの子供がわりとトラブルメーカーの場合及び子育てに対し結構神経質になっている親が騒いでいる感じである。今回はそれに引きづられて他の親たちも園に対する不平不満がつのり、乗っかったという感じであった。従って感情的になりやすい親が鎮火してしまうとこの話はもうなかったかのごとく静かになった。うちは特に子供に問題があるわけでもないので成り行きを静観するポジションを一貫して取っていた。

ただし、最近またWhatsAppのチャットが盛り上がっている。同じクラスのAlexが結構乱暴者で、痛い目に会った子の親がざわざわと騒ぎ始めている。やはり騒ぐのは同じお母さん、AlexにはSpecial Careで一人人員を付けて、行動を監視してくれないと安心できないとかどうとか。まともなお母さんもいて、It could be US. と冷静になるよう諭している人もいる。

子育てについて、わからなくて不安で仕方がないという気持ちから起こる親の狼狽はどこの国も同じだな~と思う今日このごろ。

おわり

写真はfrickrより転載