子育てしやすい?ロンドン

少し前の話になるが、宇多田ヒカルがテレビのインタビューでロンドンでの子育てのしやすさを語っていた。そしてその内容がネットで拡散されていた。

宇多田は「日本で子育てをしたことがないので私の認識が間違っている可能性もあるんですけど」と前置きしたうえで、実際に東京で生活して子供を育てている友人の話を聞く限りでは、「東京ってなんて子育てしにくそうな街なんだろうってびっくりします」と話す。彼女が伝え聞いたところでは、「外で赤ちゃんが泣いていたらすごく嫌な顔されるとか」「ベビーカー持って外に行って乗り物ですとかに乗るとまわりがまったく協力してくれないうえになんだよこんな時間にみたいな視線を投げかけられたり」「実際何か嫌なこと言われたりやられたりという体験談をよく聞く」。

 他方、ロンドンでは「とにかくお母さんと赤ちゃんがそこらじゅうにいる」のが良いのだという。日本でもそこらじゅうにいるではないか、と思うかもしれないが、宇多田のいう「そこらじゅう」は、赤ちゃん用のエリア……たとえば公園やファミリー層向けのスポット以外のすべての場所を含めている。「授乳するにしてもレストランで全然するんですよ、くだけたカフェとかじゃなくそこそこちゃんとしたレストランでも嫌な顔されずに授乳できる」のだそうだ。

Daily News Onlineより)

子供Welcomeなロンドン

子供が多い、これは確かに私も感じたことだ。自分も娘が1歳のときにロンドンに来たので、まず同じような乳幼児が街にたくさんいることに驚く。統計で見てみると東京都人口における04歳児の割合は3.8%程度(2015年国勢調査)。対するロンドンの割合はロンドン中心部・外縁部を含め7-8%。なんと2倍近い数字になっている。2倍子供が多いのだから、東京から来た自分からは沢山いると感じても不思議ではない。

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(出典:Londons Poverty Profile)

特に商業施設、および飲食店などで小さな子供を沢山見かけるのだが、とりわけ飲食店は日本より子供の数が多いと思う。なぜなら子供ウェルカムな雰囲気がとてもあるから。子供のイス(ハイチェア・ブースターチェア)は大体の飲食店に用意されている。また着席後から料理が届くまでの時間が子供にとってはおとなしく出来ず、カオスになりがちだが、その間を楽しめるように塗り絵やクレヨン・色鉛筆などをプレゼントしてくれるお店も多い。こういった配慮がいかにもファミレスといった雰囲気の店だけではなく、小洒落たレストランでも対応していたりするのが意外で素晴らしいと感じた点。

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そして、一番大きいのは店員およびお客も子供(特に小さい子)に対して興味をもって声をかけてくれたり目を合わせたりしてくれること。やはり良い子育て環境には周りの人が子供を受け入れる雰囲気を作る心遣いが必須だとつくづく感じる。日本だと他人の子供に関わらないほうが美徳になってしまっているのでは無いだろうか、その結果親子としては周りから受け入れられているのかどうかすら判別できない。

バリアフリーどころかバリアだらけの街ロンドン

一方で、公共交通機関は不便を感じた。ロンドンが誇る地下鉄ネットワークも、ベビーカーでは非常に利用しづらい。ロンドン地下鉄はゾーン制で料金が変わるのだが、Zone1と呼ばれる、ロンドンの最中心部についてはほぼバリアフリーな駅は無いと言って良いに等しい。私はノーザンライン沿線に住んでいるので例に挙げると、都心部分は階段を使わず電車に乗れる駅はほぼない。下の路線図をご覧いただくと環状部分にあたる最中心部の駅にバリアフリーという意味の青い車椅子マークが殆ど無いのがおわかりになるだろう。

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マークはほぼ路線の両端、つまり田舎の地上駅のみに集中している。他の路線も似たようなもの。大英博物館、ハイドパーク、ハロッズやリバティへの買い物なんかは全てZone1の中であるため、ベビーカーを押して親一人でのお出かけはとても萎える。勿論宇多田ヒカルが言うように、階段で立ち往生していると通行人がわっと集まってワッショイワッショイベビーカーを運んでくれることも事実だが、混雑している時にそれを当てにして出かけるのも面倒くさい。

代替としてバスがあるが、比較的段差も無く乗りやすいものの、混雑するロンドン中心部では渋滞に巻き込まれて下手をすると地下鉄の倍くらい時間がかかってしまうことがあるためこれもイライラする。

また、基本的に市内中心部は一般的に歩道が狭く、舗装も悪い。人混みが通りづらいのは渋谷や新宿と変わらない。

歌手のようなお金持ちならタクシーや自家用車で移動しているのかもしれない。

乳幼児を育ているに当たり、交通という面のハードウェアは日本のほうが優れている。一方で子育てに対し周りの人が暖かく接してくれる風土はロンドンのほうが上。ストレスは正直どちらも似たようなもの。ただやはり社会の優しさを感じられる方が親にとっては救われるような気がするのは確かだ。