アルハンブラの思い出
思い返せばもう1年以上前、昨年6月に母をスペインに連れて行った。バルセロナからアルハンブラ宮殿のあるグラナダ、そしてミハスという行程、家族全員ではなく、当時専業主夫だった私が、ロンドンに遊びに来ていた母を連れ、子供の面倒を妻に託し、生まれて初めて母子二人旅をしたのだ。
その時、グラナダで食べた思い出の味。それがこのスパニッシュスープ。
思い返すとグラナダ到着当日は大変だった。LCCの貧乏旅行ゆえ、バルセロナからグラナダのフライトが大幅遅延し、我々はヘトヘト。その後空港から乗った市内までのバスの降りる場所を間違えて、一つ先まで進んでしまい、タクシーも捕まらない中、大きなスーツケースを引きずり、トボトボと歩いてホテルに向かう羽目に。
夜9時をまわり、日もすっかりくれてきた。さすがに六十過ぎの母は限界を迎えたため、歩いている途中に見かけたレストランに入ろうと叫びだした。
それはよくある広場の観光客向けレストランと言った風情。正直私は不満たらたらだった。旅行の貴重な楽しみの一つであるメシというイベントを、ネットで口コミも確認もせず、こんなリスキーな状態で迎えたくはなかった。
だが、そんなことは言ってられない。仕方がないので、前菜のスープと、サラダ、そして普通に肉を頼んでさっさと食って、ふて寝でもするか。ホントはパエリアとか、タパスとか食いたかったのに。
と思っていた矢先であった。
ここで適当に頼んだ本日のスープが、とてもうまかったのだ。
見た目は単なる野菜スープでピンとこなかったのだが、味は最高だった。ドライソーセージが入っており、そこから抽出されたと思われるダシがガツンと効いている、そしてホウレン草がクタッと入って口当たりが良い上少々ほろ苦い、最後に細かく切ったゆで卵が入ってコクや深みを加えている。
特に最後のゆで卵が入っていることに驚いた。折角の透明なスープが黄灰色っぽく濁ってしまうのである。中華スープの溶き卵なら許せる、ふわふわな卵がまるで白糸の様な繊細さを以ってスープの主役を演じている。
翻ってこちらはただの粉っぽい黄身と、細かく砕けたプリプリの白身が、普通に食べればそこそこ美味しそうな野菜コンソメスープに渾然と浮かんでるのである、日本人の美的感覚からはありえない。
だが、ゆで卵が入らないと美味しくないのである。
その後ロンドンで英語やスペイン語のレシピを研究し、自分なりのレシピをまとめた。一応備忘録的に記しておきたいと思う。
スパニッシュスープ・レシピ
- 材料(4人前)
- 水 720ml
- サラミソーセージ 150g
- にんにく 1カケ
- ローリエ 2枚
- ベーコン(もしくは厚切りハム・ソーセージ)100g
- ★玉ねぎ 1/2玉、みじん切り
- ★セロリ 一本 小口切り
- ★ひよこ豆 1/3缶
- ★じゃがいも 1個、1センチのダイス状
- ★マッシュルーム 3−4個、薄切り
- ★種無しオリーブ塩水漬 7−8個、薄切り
- ホウレン草(ベビーリーフ)3掴〜4掴み、たっぷり
- ゆで卵 2個、みじん切り
- 塩
- 胡椒
作り方
- サラミを細かく1センチ角の大きさにカットし、にんにく、オリーブオイルと一緒に炒める。
- 脂がでてきて、こうばしくなったら、水720mlとローリエを入れ、圧力鍋で10分圧力、その後蓋があくまで放置。脂が多い場合は、蓋を開けて脂を多少取り除く。
- ★の野菜とベーコンをカット。野菜は必ずしも指定のものでなくても良い。正直なんでも良いと思う。下の写真ではひよこ豆がなかったのでプチトマトを入れてみた。ベーコンやハムを入れるのは肉っぽい食感がほしいから。
- 3番を2番の中に投入、中火で煮立ててアクをとり、その後圧力をかけて再度加熱、やはり10分圧力、その後放置。
- このタイミングでゆで卵を作り、カットする。
- 蓋が開いたら、圧力無しで加熱しながら、ホウレン草をちぎって投入、塩コショウで味を調節しながら、5分程度煮込む。
- ホウレン草がクタクタになったところで、最後にゆで卵を鍋に投入。完成。
召し上がれ!
合わせる主食はご飯ではなく、是非美味しいパン屋のバゲットでいただいて欲しい。バターは自分のお気に入りのPresident。そして合わせるお酒は白ワイン。今回はドイツのリースリングで。
辛くないので子供もとても喜ぶ味。翌朝二日目の煮詰まったスープも美味い。
時短レシピ
面倒くさい人は、サラミを炒めた後、全ての材料を一度に鍋に入れ1回でスープを作ることも出来る。但し、自分が比較した感想では、美味しさでは微妙にダシ汁と具の工程を分けたほうがスープの味がしっかりするような気がしている。