主夫のグッズ:名刺・名刺作成MOO

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仕事を辞め、海外主夫として最初に直面するのがアイデンティティの喪失。
主夫=無職、つまり無職=何者でもなくなってしまう。少なくとも男性社会・文脈ではそうだ。

人前に出た時の自分自身の紹介のしづらさといったら何だろう。
「あっ、◯◯と申します、はじめまして。主夫やってます、妻が仕事で海外赴任になり、私も会社を辞めてこっちに来たんですよ。あっ名刺ありがとうございます。XXXXXヨーロッパでマネージングディレクターをなさっていらっしゃるのですね、すごいですね、主夫ですか?いやいやいやいや大したことないです、毎日毎日オムツ替えてるばかりで、ホント気が狂いそうですよハハハ(苦笑。あつ私名刺がないので、いただくばかりで申し訳ありません、こちらからご連絡させていただきます。(以下続く)

最近地元のとある企業の社長にご招待を受け、家族でテムズ川クルーズパーティに参加した(実際は子供が病気で私だけ出席)のだが、このようなオフのイベントであってもいろいろな人が集まる中、名刺をいただく一方で自分の紹介がイマイチぱっと決まらない。大した話もできていない相手だと、後でFBでご連絡をするのも何かプライバシーにぐいぐい入り込むようで気が引ける。

一方で、駐妻コミュニティのような女性社会の中にカットインする場合もぎこちない。こちらでは子育ての親というアイデンティティを共有しつつも、自分は男性、異質の存在。

「(目を合わせて相手が気づく)あ、あの、日本人の方ですか?あっ、どうも初めまして。お子さん幾つでいらっしゃいますか?あ、2歳?うちの子と同じですね、お名前は何ちゃんというのですか?あ、□ちゃんていうのか。□ちゃーん、こんにちわぁ、かわいいなあ、将来イケメンだねぇ。抱っこしちゃおう、お、軽いなあ、うちの子結構太ってて、抱っこするとほんとしんどいんですよ。困ったもんだハハハ(苦笑。あ、私◯◯と言います。あ、そろそろ行かれます?私も行かなきゃ、またお会いしましょう、どうもーではでは。(連絡先きいてないけど、まあまた会った時くらいに訊くのががちょうどいいか。。。)」

街中でたまたま駐妻と出会って、雑談は出来てもその後LINEを交換しようと申し出ることが出来るだろうか。それこそセンテンススプリングいかがっすかーな雰囲気プンプンで、相手から警戒されやしないかと、心配になってしまうのは私が自意識過剰なだけだろうか。

そんな中で名刺を作って配るのはとても簡単かつ効果的なアプローチだと感じた。とにかく自己紹介のきっかけがスマートに作りやすい。駐妻に対しても「良ければこちらにメルアドありますから、連絡ください」とスマートに名刺を差し出すだけでいいので簡単だ。

では作るとなった場合、実際どこで名刺を作ればいいのだろうか。私がこちらに来たばかりで、自分自身のアイデンティティの喪失感に苛まされていた時、知人に紹介をしてもらったのが、MOOという名刺作成サービス。

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こちらで簡単にデザイン・フォントなどを選んで、好きな写真や図柄を加えて名刺を作ることが出来る。USを含め世界主要各国で利用ができ、UKでは50枚で送料含め30ポンド程度。150枚で50ポンド程度。是非海外駐在主夫の方にはこれに限らないが作成をおすすめしたい。

私の場合は表に自分の名前と連絡先(住所は入れない)、ブログのURLをいれて、裏には最近行ったスペインのミハスの写真を入れた。この写真が私のFacebookのカバーフォトと同じなので、出会った方が後で私をFBで探したとしてもすぐ見分けがつくようにしている。

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ところで名刺を作る上で問題なのは、肩書き等自分をどう表現するかだと思う。ただ名刺を相手に渡しても。それで終わりでは人脈が頼りの海外生活、勿体無い。

まず男性がHousehusbandという肩書を入れればインパクトは出る。ただ、自分はどんな人間か、主夫の生き様をもっと理解してもらい、人脈をきちんと広げるためにはブログ、もしくはFBに投稿でもして、リンク先をつけておいたほうがいいと思う。ここは外国、自分が前に前に出なければ誰もアテンションを払ってくれないのだ。私は肩書にConsultant, Blogger, Househusband3つを入れて、いまの置かれている状況表現して、オフでもオンでも使えるようなものにしている。

Brexitを目の当たりにして

brexsit news

図らずも、歴史的瞬間に英国にいてしまったわけだが、まあ驚いた。

先週から雨がちで、昨日の土砂降りからうって変わって青空が広がるロンドン。皮肉にもEC残留是非の国民投票が終わり、目下の問題も行方がクリアになった。

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イギリス人の友人も「こんなアホな結果になるなんて。。UKは終わった」と落胆の色は隠せない。これに引き続いて起こりうるスコットランドの独立も「まあそうなるでしょ、全然違う国だし」ともはや淡々である。

これから欧州連合リスボン条約50条をに基づき、英国政府はECへ脱退を申し入れ、実際脱退するまでのプロセスが2年はかかると言われている。勿論脱退を申し入れてしまったら後戻りは全加盟国の同意が無いと無理なようだが、とはいえそれまでに国民の頭が冷めて違った展開を見せるのではないかという楽観的な見方をする英国人もいる。

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ロンドン以外のイングランドはほぼ全部脱退が優勢だったことも考えると、この国のあり方が相当歪んでいたんだろうなと思う。金融関係者が億単位の年収をもらってポルシェを乗り回し、普通の会社の平社員で年収3〜400万円、管理職でも年収5〜600万円程度の暮らしぶりしか出来ないこの国。地方や貧しい人にとってはEC脱退によって失うものすらあまりないのだろう。

ラウンドアバウトでぐ~るぐる

By Andy F - Own work, CC BY 3.0
By Andy F – Own work, CC BY 3.0

日本人にとってイギリスで車を運転するのは楽だ。イギリスは世界的なマイノリティである右ハンドル左側通行の総本山。但し日本とは大きく違う点が一つある。ラウンドアバウトの存在だ。

日本名は環状交差点と呼ぶらしく、最近導入が進められているようだが、イギリスでは狭いロンドンの中心部は別として、街中の生活道路レベルからモーターウェイと呼ばれる自動車専用道路までとにかくラウンドアバウトが多い。

これをマスターしないとイギリスでの生活ができない。基本ルールはただ2つ。
・環状交差点に入る場合はを右から来る車を優先し、進入する。
・環状交差点内では進行方向は左、つまり全ての車は時計回りに回る。

日本ではまず見かけないこの交差点、最初はとても緊張する。

入るときの緊張感

ラウンドアバウトの手前で停止、右からくる車がいなくなるのを見計らって入るのだが、交通量が多い時は一瞬のスキをみてエイヤっ!と突入しなくてはならない。最初はタイミングが掴めず、いつまでたっても輪の中に入れない。そのうち後続からクラクションを鳴らされ更に焦る。

どの出口で脱出(左折)するのかわからなくなる

輪の中でグルグルすると途端に方角がわからなくなり、どの放射道路へ出ればいいかわからなくなる。東西南北4方向のオーソドックスな交差点であれば、わかりやすいのだが、五叉路以上になると訳がわからなくなる。あれ今の出口が2番めだっけ?3番めだっけ?なんて言っているうちに違う道に出てしまったりする。

いざ脱出したくても出られなくなる

2車線以上の環状道路の場合、侵入後すぐに脱出する場合は輪の外側、それ以外の出口は内側を走り、必要に応じて外側の車線に移って外に抜ける。但し沢山車が環状道路にいる場合は、車線変更が出来ずおろおろしているうちに出口をミスって通りすぎてしまう。その場合2週目のグルグルに突入、ハンドルを握りながら、輪を走るハムスターになったような気がしてやるせなく、情けない気持ちになる。

恐怖Max! マジックラウンドアバウト

最初の戸惑いも今やいい思い出、一か月も車を走らせればすっかり慣れる。しかし、先日Swindonという街を通った時、史上最強のラウンドアバウトに遭遇した。

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wikipedia

なんと、一つのラウンドアバウトに小ラウンドアバウトが5つ!このような複合ランドアバウトはマジックランドアバウトと呼ばれ、ここSwindonのものはイギリス屈指の難易度と恐怖感が味わえる。

私はこのマジックランドアバウトにたまたま通りすがってしまったので、その恐怖たるや、本当に半端無かった。

広大な広場は、あちらこちらで車がくるくるとまるで舞踏会、小ランドアバウトはそれぞれ時計回りだが、中心の大きなランドアバウトは反時計回りに回っている。どこに向かっているのか頭のなかは大混乱。そもそもどうしたら右端の道から左端の道へ抜けられるというのだ。前知識がなければ正直攻略できない。

 

swindon magic roundabout
itv news

写真には収めなかったが、マイカーのナビの地図が一瞬で方向を判断出来ないほど複雑怪奇な模様になっていた、結局、進入後左から2つ目の出口に行くはずだったのだが、堪らずすぐ左隣の出口から逃げ出して、他のルートで目的地に向かった。マジックランドアバウト体験はその一回きり。今振り返ればもう少し遊んでみれば良かった。残念。

運転席からの眺めは下の動画をどうぞ。

ナショナル・トラスト

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ビートルズの曲に Happiness is a warm gunという曲があって、中学生当時、あまりのカッコよさに身悶えしながら、何度も何度もカセットテープを巻き戻して聴いた、ホワイトアルバムの曲の一つだった(ちなみに身悶えしていたもう一つの曲はHelter Skelter)。その歌詞にNational Trustという単語があった。それがなぜか妙に耳に残るため記憶に残っていた。

ようやく30年近く経ち、初めてNational Trustが何なのか判った。

National Trustとは歴史的文化遺産や自然景観を保護する非営利団体、こちらの会員になることで同団体が管理するイギリス国内の施設や公園などに割引で入れるほか、駐車場料金も優遇を受けることが出来る。夫婦で年間105ポンド。後日会員権とガイドブックが送られてきた。施設によっては入場料が一人20ポンド程度かかったりするので、3回程度行けば元は取れる計算。

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民間の草の根運動を発祥としているので、政府や地方自治体でカバーできないような小さな古民家から、景観の素晴らしい地域まで市民の視点で保護を進めていることが素晴らしい。

写真はそのナショナル・トラストが管理する、国内でも有数のブルーベルの群生地、Ashridge Estate。ロンドンから車で1時間半程度で気軽に行けるのが良い。

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今月から働きます

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6月になったが、朝の気温は10度。まだダウンジャケットやコートが必要なくらいロンドンは寒い。迂闊にも風邪をこじらせてしまった。そんな相変わらずの天候の中、自分の状況は大きく変化.。今月から働きます。

この3ヶ月、仕事をなんとかこちら再開したいと悪戦苦闘を繰り返していたのだが、駐夫(帯同者)の壁は厚い。日系転職エージェントを通して応募した10件弱のポジションは全て面接すら進まず終了。

そもそも、給与額より時間のフレキシビリティを求め、帰国時期が妻(正確には妻の会社)次第という私は、一般的に年収の20%と言われるフィーをもらう彼らのビジネスモデルには 商材として合致していないのだ。企業がエージェントに支援を依頼する時点で、必要な人材は正社員、願わくば終身雇用という相手を探している訳で。思惑半ばで従業員が帰国してしまったら企業としてはエージェントに”金返せ!”となってもフシギではない。

やはりここは、現地の日本人経営者にお会いしていろいろ相談をさせていただき、ご支援いただいたり、彼らの細かいニーズを拾ったりしたほうが、より自分の希望に合致しやすい仕事内容やスタイルにたどり着けるような気がしてきた。

そのような中で、プロジェクトベースで数ヶ月、とある日系のIT企業のお仕事をいただくことになった。

勿論直接企業と条件等は話し合うが、期間も勤務形態もフレキシブルなので直接契約/雇用ではなく、派遣会社に登録し、派遣社員として勤務する。自分は子供の面倒を見なくてはならないので、週3日子供をナーサリーへ送迎し、その空き時間(9時〜5時)で仕事をして、残りの2日間は子供と一緒に過ごすというアプローチとなる。これであれば、企業側も労働者側もWin-Winとなりうる。

このような身勝手な願いを聞き入れ、声をかけていただいた社長には本当に感謝しか言葉が見つからない。

勿論子育て担当の主従は入れ替わるが、海外でも東京にいた時と変わらず、夫婦で日本と変わらず子育てと仕事の両方を実現させたい。その試みの最初の一歩が始まった。

海外赴任となると、昭和のパラダイムでは男性が海外で出世街道を進む中、女性が仕事を泣く泣く手放し、完全に家に入り、子作りや子育てに専念という形式が一般的。ただし、今後はどうであろうか、日本の人口が縮小し一億総活躍時代と呼ばれる時代、これからのビジネスにおいて”海外進出”×”女性の活躍”というキーワードは当然の帰結と予想される。

一般的に男性に比べ語学が好き/得意な女性は多い。結婚しても海外赴任する機会も多くなるであろう。その場合夫はどうするのか、帯同して家に籠るのか?でもそれでは昭和のパラダイムの中で性別が入れ替わっただけだ。子供も産めない分女性よりも分が悪い。

男性だからこそ、どんな国に放り出されてもたくましく自分の能力を発揮すべきではないのだろうか。海外で専業主夫として時を過ごすのは、帰国後の家族の生活リスクを高めてしまう。

それが私の渡英にあたってのテーマであり覚悟であった。仕事ができないなら帰ろう、しかし40歳過ぎとは言え、もしそうなったらそんな情けない自分でいいのかと。

ナーサリーで覚えた英語の歌を歌う娘を見て思う。子供は可能性の塊だと。でも自分も可能性を捨ててはいけない。幾つになっても。だ。