海外主夫候補生からのメール

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10年来の友人から、相談が舞い込んできた。

奥様の海外転勤が決まり、一児の親であり、夫である自分はどうすべきだろうかという相談だった。

まさに1年半前に自分が悩みに悩んでいたテーマである。

赴任地はオーストラリア。

勿論、家族と一緒にいるのが良いに決まっている。当の本人も家族全員での渡豪を望んでいる。

そもそも片親で海外子育てはほぼ不可能、子供が病気になった時点で仕事できなくなってしまう。共働きである我が家でも子供がいつ病気になるのか常にヒヤヒヤしているのだ。

帯同する夫が仕事を続ける上で取れるオプションは3つ。

  1. 今の仕事で転勤の可能性を探る
  2. オーストラリアに転勤の可能性のある別の仕事を探す
  3. 現地で探す

まず、1だが、難しい。そもそも世界の主要都市に事務所があるのは大手金融、商社、メーカーくらいしかない。その上、妻と同じタイミングで赴任、そして同じタイミングで帰国ということが出来るはずもない。

2 については、やはり働く側の都合の良い夢物語にしか過ぎない。まず海外赴任のコストは赴任手当、そのた生活コストの援助などで通常のその人に支払われる給与の1.5倍はかかると言われている。これから行くとわかっているなら現地採用出来るかもしれないのにそもそも赴任させる理由があるのかということになる。今度は万が一あったとしても、逆に配偶者の帰任が決まったら一緒に日本に帰国したいのか?という疑問が雇用者側に生まれてしまう。

現実的な解は3番しかないのだ。会社を辞め、帯同し、そこから新たに仕事を見つけ、復職する。
自分が取った道だ。

もちろん自分も3番で頑張って欲しいと伝えた。

ただ、これも自分の経験からそう簡単ではない事は明らか。やはり帯同者である以上、雇用者側はいつ帰ってしまうか分からないリスクを非常に気にする。しかも日本の企業は現地採用でも日本と同じ正社員・フルタイム雇用にこだわることが多く、欧米では割りと普通な期間限定のコントラクター的な採用の発想は薄い。従って面接までなかなかたどり着けないのが現実。

とにかく、立場はバイトでもフリーランスでもなんでもいいので、自分の元の仕事に近い分野の仕事を始めて、実績を作ること、そして現地日本人社会との人脈を築き、チャンスを逃さず拾うこと、打率を上げて打席を増やす。これしかない。

勿論海外での仕事と子育てを両立できた暁には素晴らしい体験になることは間違いない。最悪仕事がなくても家族全員で海外生活を過ごすことは、長い人生の中で短い子育て期間を考えたときに、かけがえのない経験になることは確かである。

それでも、友人もアラフォー世代だということを考えると、経験者としては両手でオススメすることは憚られてしまう。キャリアリスクと今後発生するストレス・プレッシャーに耐える覚悟が本当にあるのかと。

そして気になるのが渡航先。ニューヨークや東南アジアならなんとかなりそうな気がするが、個人的にはオーストラリアだとジョブオポチュニティがあるのか判然としない。このあたりは本人の職種なども関係するのでなんとも言えないが。

ここで、ふと一つ聞きそびれたことがあったのを思い出した。

お子さんの年齢は現在幾つなのか?

子供の年齢で大分話は変わってくる。それはつまり現地でも夫に仕事が見つかるか?ということではなく、夫が本当に帯同する必要があるのか?というそもそも議論の大前提の部分。

聞くとご子息は小学校高学年とのこと。

であれば、寂しいかもしれないが、全体最適解は家族バラバラ、夫は今のキャリアを優先させて日本に残り、母と子だけで海外赴任するということが現実的なのではと考える。

その中で出来る限りのこと、例えば数ヶ月休職をして生活のセットアップを手伝う、有休をフルに使ってなるべく頻繁に家族で集まるようにするなどを考えたほうがいいということだ。

本議論に関しては色々なファクターを考え無くてはならない、帯同者の仕事内容、本人のスキル、年齢、子供の人数、年齢、帰国後の生活や仕事。現在の変数と将来のシナリオを組み合わせ頭をひねる必要がある。

でも最後は、海外でもどうにか自分は仕事ができる、してやるという根拠のない自信・強烈な達成意欲と、まあどうにかなるでしょという楽観的なマインドがなくてはどうにもならない。

皆さんだったらどうしますか?帯同しますか?