あるイクメンの悩み

tree

「ああ別居だ」
「別居しよこれ」
「しんどい」

Aはチャット上で突如切り出し始めた。

まあまあ、ちょっと待て。まだ何かやり直す方法があるんじゃないかな。子供には罪がないし、1歳になって間もない子供が可哀想だし。

「子供に罪ないですけど、半分あいつなのかと思うと愛情うすれるんすよ」

最近、主夫をやっているお陰で、男性からの家庭・仕事両立について相談を受けることがあるのだが、この件は重かった。

Aは(男性、30代、仮称)は元同僚。2年前に結婚し、奥様、現在13ヶ月の男の子が一人の3人家族。

Aの奥様の頑なな子育てポリシーによって、夫婦関係に亀裂が入り始めているという。そのポリシーとは、「保育園に通わせるのは子供がかわいそう。親の手で育てたい。」というもの。保育園に通わせるのがかわいそうかどうかは極めて主観的な話で私は賛同しかねるが、まあ人それぞれ価値観がちがうからそれでも良しとしたい。

しかしながら、Aが困窮しているのは、奥様がその上で仕事との両立をしようとしていること。奥様はサラリーマンではないので仕事のフレキシビリティはあるものの、自信が家を空けることもしばしばある。そのばあいはAが会社を自宅勤務にして子育てに当たることになっている。

勿論常識的には、これで仕事が手につくはずもなく、実際子供の面倒で手一杯になり、在宅といいながら欠勤同然になってしまっている。だからこそ、Aは奥様に保育園に通わせることを提案しているのだが、聞く耳をもってもらえない。

奥様としては、夫の仕事の馬力を落としてでも子供の面倒に当たって欲しいという希望があるようだが、一方都内の一等地にマンションを持ちたいという希望も捨てていない。

夫であるAとしては、仕事も育児も稼ぎも自分の思い通りに無理を通そうといている妻の分別のなさに辟易してしまっているようだ。仕事はすでに支障をきたすレベルに近づいている。公私においてAの疲労も溜るばかりだ。

Aは振り返る。どうしてこうなっているのだろう。

子供が出来るまでは良かった。子供が出来てから妻の見えなかった価値観ずれや優先順位の付けられぬおかしな思考が露わになってしまった。

子供中心で夫の存在は薄い。これからどのような生活を築いていくかを横において、稼ぎの柱となるはずの夫の仕事を軽く見ている妻の態度にも不満がある。週に2回は妻側の両親がやって来て、親娘の大騒ぎが始まる。まるで妻の実家。落ち着く場所も無い。全て子供を理由に自分の存在がこの家から消えかかっている。楽しい事なんて全然ない。子育てってもっと生産的で、楽しい共同作業じゃなかったっけ。

Aの親には相談したのか?と私は尋ねた。なんとか奥様の理解を得るには親同士を巻き込んで行くしか無いのではないか、そう考えたからだ。

「親にも相談しましたよ。『初孫、かわいいけど、そんなんなら諦めるからまたいい人みつけてもう1人つくりな』って。」

おっと、軽いな。私はちょっと拍子抜けというか、あまりの潔さにこちらが動揺してしまった。でもきっと奥様方の家庭や、奥様の性格、いろいろ勘案して議論した結果なんだろう。

そして冒頭の別居のくだりが始まった。

「もう半年前から別居を考えているんですよ。」

Aは相当追い詰められている。心にまったく余裕はなさそうだ。

話を聞いていて、もはや子育ての夫婦での分担などの話ではなく、そもそもの家族のあり方の問題だ。

「なるほど、そこまで覚悟があるならパフォーマンスとして別居もありかもだね。」

「やっぱりそこですかねえ」

「こちらの言いたいこと、やりたいこと、奥さんにお願いしたいこと、きちんと伝えた上で、平行線なら、頭を冷やしてもらう」

「パフォーマンスでなく本気で終わりにしたいんすけどね。。。。ダメだな俺もそんなんだと。。」

「まあそこまでの覚悟があるからこそ、本気で相手とぶつかっていけば良いんじゃない。変わらないならそれこそ終わりだよ。」

「そうすね。」

チャットが終わる。ふう。なんかすごく疲れた。時計を見るとあっという間に1時間半が過ぎていた。

奥様の考えが頑な過ぎるという断罪は簡単だろう。でもきっと彼女にも言い分があるはずだ。初めての育児に対するおおまかな不安から、我が子を家族の目から離すことがどれだけ心配か。それを踏まえた思いやりを夫は見せているのだろうか。子供のことを考えたら、父としてもっと彼にはやるべきことはあるのではないか。

疲れたのは自分が本件に無力だったことだろうと思う。結局自分にはAと家族、そして一番かわいそうな子供を救えることは出来そうもない。なるようにしかならないのだろうか。

読者の皆様はどう考えますか?

ナーサリー初日

本格的にナーサリー(保育園)探しをして1ヶ月、2月の最終日の今日、ついにナーサリー登園日となった。

もうすぐ2歳になる娘は言葉を急速に覚え始め、キラキラ星を歌うなど成長著しい。そんな伸び盛りの中父と子で四六時中一緒にいても絶対教育上良くない気がしてならない。

駐在の奥様方は毎日日本人同士で集まって子供同士を遊ばせたりすることで、保育園なしで過ごされることも多いようだが、自分は男なのでまずそういったママ友の輪に入るのが苦手。むしろ子供には現地の子と思い切り遊んで欲しい。

これまで10件以上のナーサリー見学を妻と分担して探した結果。車で5分の距離のナーサリーを見つけた。プライベートの為カムデン区のコミュニティーナーサリーより若干高く、2歳児以上、週2日、8時から18時で約£550(88,000円)する。(コミュニティは£510程度)。

妻の会社からも3歳児以下の子供の保育費用は出ないので、100%自己負担となり、きつい出費であるが、子供が保育士の先生の元、集団生活を送り、社会性を身につけたり、いろいろな歌やおゆうぎや自然に触れることで感受性を豊かにしてくれるのは親としても非常に嬉しい。

先週に入学許可レターをもらい、今週末は入園準備に追われた。これから娘に訪れる新しい出会いや体験を創造するだけで、まるで自分が学校に行くようにウキウキしてしまった。

 

admission-letter

登園に際し、持ち物は以下、名前を入れる必要あり。
・着替え2着
・オムツ1日4−5枚分
・お尻用クリーム
・beaker
・flannel
・歯ブラシと歯磨き粉
・日焼け止め

ここでイギリス英語に戸惑う我ら両親。ビーカー?フランネル?保育園で実物を見せてもらい、何のことか確認させてもらった。ビーカーは子供用のコップのことで、フランネルとはタオル生地のことらしい。バスタオルとかは必要なくて、一辺15cmくらいの正方形のハンドタオルでOKとのこと。シーツやらバスタオルやら靴下やらあれこれ用意していた日本の保育園とは違って少ない。

そして入園1週間はSetting-in Sessions(慣らし保育)となり、パートタイム通園でも毎日出席する必要がある。

IMG_5693

日本にいた時、2週間くらいかけて慣らし保育をしていたのと対照的で、1周間でさっさと親離れをさせてしまうところが面白い。短期間で何とかする保育士のプロ根性がなせる技なのか、どうせ独り立ちしなくてはならないのだから2週間も要らないという合理性の結果なのか。

そして初日当日。Day1は10時から12時までで、親が教室の中でつきっきりという日。まだ22ヶ月の娘は一番下のクラスに入る。生徒数は16人。保育士は4人。うちの娘にアサインされた保育士(Key Worker)さんにご挨拶。

しかしながらいつもはおもちゃがいっぱいある保育園に行くと一目散に遊び始める娘も、何か今回は異変を感じたのだろうか、妙に私にまとわりつき、情緒不安定になっている。さすがに3ヶ月以上保育園生活が中断していたので、親と離れることに危機感を感じたのだろうと思う。さっそくおやつタイムが始まったのにもかかわらず、席にもつかず食べようともしない。

オムツ替えをしてもらったら更にギャン泣き。

担当保育士さんに娘の最近のお気に入りの遊びは粘土であることを伝えると、早速粘土をだしてくれて娘もゴキゲン。延べ棒で平らにしたり、ハート型やリンゴ型やバナナ型の型抜きをしたり、あそんでもらってようやく落ち着きを取り戻した。

nurseryその後、園庭でクラスメイトと滑り台などの遊具で遊びまわり、最後のご挨拶は先生にむかって投げキッス。初日にしてはすっかり自分のペースが作れたようだ。

期待以上に滑り出しは順調。明日からまた楽しみ。
そして自分の時間が作れるようになった私自身はこれからどうするか。

 

家庭医登録

stethscope

現在、妻の赴任でロンドンに来ているため、病気・怪我の際は妻の会社における赴任者用の保険制度を利用して治療を受けることになる。その場合、日本人の運営するプライベートの医療機関に訪れ、精算も給与で調整されるため、キャッシュレスで簡単に医療サービスを利用できる。

一方、ここイギリスでは、NHSという国民健康保険制度があり、その制度下にある医療機関では少額の自己負担で医療サービスを受けることが出来る。イギリス人だけでなく、自分たちのような在留外国人にも適用される。

ちなみにこの制度によってイギリスの一人あたり医療費負担額は日本と同程度になっている。

Health_Expenditure_per_capita
By © ZH8000 / Wikimedia Commons

ところでNHSの医療サービスを受けるには、GP登録というものが必要。GPGeneral Practionerの略で、家庭医・町医者のこと。イギリスでは日本のように大きな病院に最初から訪問は出来ない。従って居住地域の近所のGPに患者登録をし、何か具合が悪くなったらまずはそこで診察を受け、結果を元に病院を紹介してもらうというプロセスが必要。このGP登録がないと事が起きた時にいろいろ面倒が起きて、100%自己負担診療になってしまう恐れもあるとか。

イギリス旅行中や緊急事態の場合にはどこの医者にかかるかわからないので、今回近所のお医者さんにGP登録を行った。

IMG_5578

WebページよりDLした6ページ程度の書類に既往歴や家族歴など記入していくのだが、信仰する宗教についての質問があるのはイギリスっぽい。民族のるつぼのロンドン、輸血が出来ない宗教などもあるので確認しているのだろう。子供の予防接種履歴については、英文のレターを日本の小児科で作成してもらったので、そのコピーを添付。診察のアポイントは必要なのかわからないので電話で確認すると、単に書類を出すだけで良いという。

家族3人分をまとめて、昼寝から起きてきた娘をベビーカーに乗せ、散歩がてら提出しに。受付で書類の確認を提出。受付のお姉さんに不備を確認してもらい特に問題がないので受領いただき終了。

非常に簡単に終わってしまった。在留証明など身分証すら見せなかったけどこれでいいのだろうか。

育児とYoutube

watching-ipad

これなしではきっと子育てが辛かっただろうなと思うアイテムはYoutube。

一度でもお世話にならない日がない。でかける場合の車の中、外食先、スーパーの買い物中、家に居る時も自分が夕食の支度中などなど、Youtube動画を子供に見させておけばとりあえず自分の事に集中できる。

ただ、やはり心配なのはタブレットやスマホで見せる場合。目が悪くなりそう。子供はものすごい集中力で画面を凝視するので見ているこちらが怖くなってくる。家にいる時はテレビ+Fire Stickで再生しているので若干安心だが、娘は遊びの手を止め、催眠にかかったようにこれらを見続けるので頭が悪くなるんじゃないかと心配してしまう。

確かに親としての葛藤はあるが、親も子供もメリットがあるのだから、うまく付き合っていく方法を親子で確立していくほかないだろうと思う。

ところで、もっぱら娘のお気に入りはアンパンマン。とは言ってもアンパンマンのアニメはネット上にあるはずもなく、アンパンマンのおもちゃの動画を見せている。おもちゃ動画は様々なものがuploadされている。小さいこどもの姉弟が次々と新しいおもちゃを遊んで解説するものや、アンパンマン・バイキンマン等登場人物の声を一人何役もこなして人形劇にしているもの、人形でストップモーションアニメを作っているなどなど。自分が一緒に見ていて若干ハマってしまったのが、コロネおじさんという方の動画。なぜなら登場人物のキャラ設定が明確にあり、話がシュールで笑えるのだ。ジャムおじさんは相当なスケベジジイでドM。アンパンマンはちょっぴりスケベでジャムおじさんに対し厳しい。名犬チーズはスケベかつ抜け目ない。バタコさんは不思議キャラ。そしてなぜかドSなリカちゃん人形が出てきたりする。

■ドSリカちゃん、変態ジャムおじさん

そして一番のお気に入りがこれ。

なぜかおでん??シュールな世界観とトンデモな結末(ケツ末?)にビックリの動画

最初なんだこれと思ったのだが、何度か再生するうちに、ジワジワ来た。おでん顔のキャラたちと、ジャムおじさんとバタコさんのシュールな歌と踊り、そして最後のジャムおじさんの汚いケツ。娘もこの顔がおでんというシュールさに最初はまったく理解ができなかったようだったが、今ではジャムおじさんやバタコさんを見つける度、子どもと一緒に作品中の「おいしくな~れ」踊りを踊ってしまう始末である。

そして娘は今もアンパンマンがアニメであることを知らない。

アビイ・ロードで電話に出んわ

abbey-road-sign
wikipedia

今週水曜日に、37.2度の発熱があった。関節痛と倦怠感が激しく、娘の面倒や夕食を準備するような気分じゃない、けど主夫だからやるしか無い。幸い一日で熱は収まったが、おそらく娘から貰ったに間違いない。先週娘は38度超の熱を一晩出して私と妻を慌てさせたが、その後も下痢と鼻水が少々続いていた。

そしてまだ気だるさが残る金曜日、娘の調子が悪化した。やはり風邪のようだ。透明な鼻水が両方の穴から流れでている。いままでとは量が違う、毎回ティッシュで拭ってやる必要がある。しかも昼寝の後、とうとう黄色い鼻水までてろんと顔を出してしまった。ここでさすがに病院に行こうと決心。ちょうど自分も娘の後を追って同じ症状が出ているので、ついでに見てもらえば丁度いい。そんな気持でSt. John’s Woodにある、日本人向けの北診療所へアポの予約電話を入れた。

現在の時刻は2:40pm、唯一アポが取れた時間が3:00pm。あと20分しかないが、自宅から診療所へは十分間に合う距離。車に娘を乗せてHampsteadからSt. John’s Woodへ、道中もスムーズでアポの5分前に辿り着く。が、都会の病院故に駐車場が1台分しか無い、しかたがないので一旦病院を離れ、近所のパーキングスペースを探してウロウロ。グルグル近所を回り数分、パーキングエリアを発見。しかし既に時計は3時を回っていた。病院のアポに遅れてしまう、急がなくては!

パーキングの支払機が近くにないので、標識のサインをカメラに収め、後で支払登録することにした。イギリスでは電話の自動応答でも支払うことが出来るのだ。必要なのはロケーション番号6173と連絡先。

parking-sign

子供を抱えて小走りに病院に向かう。すると路上に群がり写真を撮る10人位の人々。おお、ここはアビイ・ロード(Abbey Road)だ。説明するまでもなく、ビートルズのアルバムタイトルにもなった通りのこと。ジョン・ポール・ジョージ・リンゴの4人が並んで撮影したその横断歩道は病院と150メートルくらいしか離れていないのだ。

abbey_road
wikipedia

病院には7分遅れで到着。寒気対策にカイロを背中に貼っていたのに加え、荷物と子供を抱えてもう汗びっしょり。幸い病院はスムーズに診療が済み、父娘共に風邪薬の処方をしてもらった。

ところが、問題はここから。

院内の薬局に移動し、薬剤師に処方箋を渡したところから、ピンチが始まる。

娘の機嫌があまり良くなく、お菓子が欲しいと騒ぎ始める。つい1時間前にリンゴ半個も平らげたのに。何も持ってないよと言っても聞くはずもなく、私のバッグを漁ろうとする娘。

薬局の環境も良くない。子供が時間を潰せるような楽しい物は一つもない。しかもイギリス人のノロノロオペレーションで、一向に薬が出てこない。

はと気づく、駐車場の支払登録を済ませないとまずい、30分過ぎてしまっている。もう既に切符を切られてもおかしくない。

そう思いきや娘がギャーギャーぐずり出す。仕方なく私のiPhoneYoutube動画を見せる。娘が見たいのはいつもアンパンマン、それもおもちゃの紹介動画、いつもこればかり。

やれやれ、これで暫くは大丈夫かと思ったのだが、しまった、電話を渡してしまっては支払が完了できない。

Youtubeマジックも今日はあまり効果が出ず、子供はぎゃあぎゃあ騒ぐ、お菓子が欲しくて「ちょうだい、ちょうだい、ちょうだあああああい!!!」と泣きわめく。支払の電話をかけようとiPhoneを取り上げようとすると更に泣きわめくので始末に置けない。

泣きわめくのを承知で、断続的に娘よりiPhoneを取り上げ、電話をかけて、何度も何度も自動音声で登録を試みるも、なぜか写真の6713が番号として存在しないとエラーを返されてしまう。

もう限界だ。こっちの体調が悪くなりそう。

LINEで妻にパーキングサインの写真とメッセージを送る。頼む、これを見て俺の代わりに登録して!!

既読はつかない。

断続的に電話をかけて、何度も何度も自動音声で登録を試みるも、なぜか写真のロケーション番号6713が番号として存在しないとエラーを返されてしまう。脂汗が額に滲んでくる。

既読はつかない

その間も子供は泣きわめき、よくわからない主張をし始める「もって、もって、もってええええ!」。

何を言いたいのか全くわからないのでかばんやオムツなどいろいろ持たせてみるが、違うらしい、余計怒って泣く。もううるさいし、いたたまれないので、薬局を出る。

既読はつかない。

暫く外で気分を逸らそうと努力するうち、誰かを呼んでいる雰囲気だったので再度中に入る。案の定自分が呼ばれていた。急いで薬を受取り、歩いている感も左腕に娘をかかえながら右手で電話をかけ、入金を済ませようと必死に自動音声と格闘を続ける。

なんと、外に出た途端、呪いの6713が登録出来た!意味がわからない。深く考える余裕すらない。もう1時間近く経ってしまったけれども、諦めずに1時間分お金を電話入金した。

そして再びアビー・ロード。もう入金した以上、慌ても仕方ない。手遅れならそれまでだし、切られてなければ今の入金でセーフなはず。もう足掻いても結果は出ている。あとは車に戻るだけ。

abbey-road2

そして結果は。私の負け。

駐禁切符が切られた時刻は入金のわずか7分前のだった。
“Abbey Road”のアルバムにもあったな、The Endという曲が。

既読がつく。

はや2週間で2回めの駐禁切符。。。最近運気の流れが良くない。お祓いしたい。